発端は社員のメンタルヘルス問題

 Nature Serviceの赤堀氏はWebマーケティング企業やロボティクス分野の企業も経営している。その経営者の立場からも、自然体験は重要だと語る。

 「社員たちと一緒に自然に遊びに行ったとき、帰りの車内でしゃべる雑談の内容が明らかにポジティブに変わったのを感じた。社員の雇用と健康を預かる経営者としても、自然の有用性は常々感じている」(赤堀氏)。

 信濃町ノマドワークセンターに至る源流は、社員のメンタルヘルス問題だったという。赤堀氏は「過去の一時期、社員がメンタルヘルスにかかり、経営者としてどうしたら良いかと悩んだ」と打ち明ける。

 その一方、赤堀氏は心身の調子を崩すことはなかった。別の社員から「社長(赤堀氏)が忙しくてプレッシャーにさらされていても健康なのは、時間を作っては自然の中に足を運んでリフレッシュしているからではないか」と指摘され、一理あると調べ始めた。すると、海外では自然環境と人間の健康に関する研究事例が複数存在し、森林浴などの効果を測定したデータが公開されていることを発見した。

 そこで、都内のビジネスパーソンを対象に気軽な自然体験を提供する事業を手がけようと、2013年に仲間と共にNPO法人Nature Serviceを設立した。当時はアウトドアに対するハードル感が今よりも高く、知識がある人だけが行くというニュアンスが強かった。

 自然体験サービスやイベントの開催を進める中で、信濃町が所有するキャンプ場の再生に携わることになった。集客にはWebマーケティングのノウハウを、東京ドーム1.8個分の敷地内にある施設管理にはIoT(モノのインターネット)のノウハウを適用し、2019年のゴールデンウィークは累計で1600人泊以上を集客した。

 森林環境下における脳波測定の実証実験は、自らが感じている自然体験の効果を検証したいという思いと、「経営層に提案するためにエビデンスがほしい」という企業の担当者の声を受けて実施したものだ。「経営者は、いくら社員の心身の健康に良さそうだと感じても、やはり投資対効果を気にするものだ。そのため企業の現場担当者としては、科学的に検証されたデータがあれば説得しやすい」(赤堀氏)ためである。