自分たちの街でやりたいことを自分たちの手で

 同所を選んだ理由についてソトノバの石田祐也共同代表理事は、渋谷区が「渋谷駅中心地区まちづくり指針 2010」において、「めぐり歩いて楽しい回遊空間」の創出を目指していることを掲げ、歩行空間確保や道路空間充実に向けた取り組みを推進中であることを挙げた。

 常態化した路上駐車などが道路・交通課題となっていた宮益坂では、渋谷区が「歩行者中心の道路空間実現に向けたファーストステップ」として、第一車線を占有する路上駐車の削減に向けた社会実験を2017年から実施中だ。さらに2018年度には、前述の「たまりスペース」(歩行者滞留空間)などの社会実験も行っている。

 石田氏は、このような状況に加えて、街路樹が作り出す木陰や、古くから大山街道として渋谷の街の目抜き通りとして栄えてきた宮益坂のポテンシャルに目を付けたという。今年5月、渋谷区の土木部道路課へ「Park(ing)day」の実施について相談に訪れたところ、渋谷宮益商店街振興組合と渋谷警察署を紹介され、協力を得て実現したという流れだ。

 実施にあたっては、渋谷警察署へ道路使用許可申請を渋谷宮益商店街振興組合名義で提出した。企画と運営は、ソトノバが運営する「ソトノバスタジオ タクティカル・アーバニズムクラス:Park(ing) Dayのノウハウを学び、実践する!」の受講生ら11人が行った。同講座は、ソトノバが、「パブリックスペースに関する能動的な学習と交流の機会」として開催する人材育成の場。今年8月から全6回のスケジュールで行われた。長期的な都市戦略に基づいた仮設的実践を指す「タクティカル・アーバニズム」(Tactical Urbanism)の実践例として、世界で同時多発的に行うアクションである「Park(ing) Day」を実施し、そのノウ・ハウを体得する、という内容だ。

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当日の運営を担ったソトノバスタジオ タクティカル・アーバニズムクラス」の受講生の皆さん(写真:小林直子)

 今回の渋谷宮益坂での「Park(ing) Day」実施のために、開催場所(宮益坂2カ所)の現地視察を経て、当日に使用するファニチャーなどのプランニング(デザイン、コスト、ポータビリティ)と購入・制作を行ったほか、道路使用許可申請に必要な申請書類を受講生が自ら作成したという。実施コストは約12万円。同講座料の一部から捻出されるほか、ソトノバが制作した「Park(ing) Day」のTシャツなど関連グッズの売り上げを充てる予定だ。一部の家具や人工芝はソトノバ所有のものを使用した。

 空間演出については、歩行者が立ち止まって休息できるような快適な滞在空間を形成するとともに、将来的な整備に向けた道路空間の新しい使い方を提示することを課題としてプランニングした。地域住民、就業者、来街者の交流の拠点としての機能も想定した。また、宮益坂の歴史や地形の特徴を事前に調査したうえで宮益商店街のPRや新たなイメージの発信に寄与することも前提としたという。

 「自分たちが自分たちの街でやりたいことを自分たちの手で実現する知識と方法を持つ人を育てていきたい。今回のイベントを目撃した人たちが自分たちの街でもやってみたい、と広がっていくことが次のステップだ」――。石田氏は、10月1日に開催された「Park(ing) Day2019渋谷宮益坂・実施発表会」で、このように語った。“目撃した人たち”はもちろん、今回、渋谷でPark(ing) Dayの設置現場を経験した受講生の各地での活躍にも期待したい。

修正履歴
1ページ目2枚目写真キャプションの「風鈴」を「風車」に、本文の「両車線2カ所の路上駐車帯」を「両車線2カ所の」と訂正しました。お詫び申し上げます。また、主催者より実施コストについて追加情報の提供があったため、2ページ目に「一部の家具や人工芝はソトノバ所有のものを使用した」という情報を追加しました。 [2019/10/08 15:50]