「Park(ing)day2019渋谷宮益坂」会場(上部側)(写真:小林直子)
[画像のクリックで拡大表示]
「Park(ing)day2019渋谷宮益坂」会場(下部側)。「風」をテーマに風船や風車などで五感を楽しませる空間を作り上げた(写真:小林直子)
[画像のクリックで拡大表示]

 パブリックスペースに関するウェブマガジン運営や調査研究などを行う一般社団法人ソトノバ(東京都世田谷区)は2019年9月20日、渋谷宮益商店街振興組合と共同で「Park(ing)day2019渋谷宮益坂」を開催した。

 「Park(ing)day」は、2005年に米国・サンフランシスコで始まった取り組みだ。路上パーキングスペースを公園的=Park(ing)な市民のための空間に変えることを趣旨とし、毎年9月第3金曜日に実施。その様子がSNSなどで「#Parkingday」というハッシュタグをつけて共有され、世界中のパブリックスペースのムーブメントとして広がっている。

 「Park(ing)day2019渋谷宮益坂」は9月20日金曜日13時~17時の約4時間にわたって開催された。渋谷郵便局を基点に、通りの両車線2カ所を選んで滞留空間を創出した。坂の上部(幅2メートル×長さ20メートル、面積40平方メートル)と下部(同)に地形や自然環境を活かした仕掛けによって気軽に立ち寄れる空間とした。

 視察・来場者数は約100人(主催者発表)。ソトノバ共同代表理事の泉山塁威氏は「歩行中心の通りにあって、通り過ぎるだけではなく、あえて立ち寄る人が100人いたということは、道路活用の新たな可能性を示す期間限定のムーブメントとしては大きな成果だったと言える」と評価する。

Park(ing)day2019渋谷宮益坂 実施平面図(資料:ソトノバ)
[画像のクリックで拡大表示]
宮益坂上部エリア。付箋を使ってメッセージなどを表現するアートスペースを設けた(写真:小林直子)
[画像のクリックで拡大表示]
宮益坂上部エリアの人工芝を敷いたスペース。靴を脱いで直に座ったり、用意した椅子などに座って語り合うことができる空間にした(写真:小林直子)
[画像のクリックで拡大表示]
宮益坂下部エリア。カフェスペースでくつろぐ人(写真:小林直子)
[画像のクリックで拡大表示]

 宮益坂での「Park(ing)day」は、ソトノバが渋谷宮益商店街振興組合に企画を持ちかけ、共催する形で実現にこぎ着けた。ソトノバはこれまで2017年に大宮(埼玉県さいたま市)、2018年に沼津(静岡県沼津市)で「Park(ing)day」の開催実績を持つ。3回目の実施となる今年は、より人通りの多い「都心のど真ん中」渋谷・宮益坂を選んだ。都内初開催である。

 同商店街振興組合の菅野英雄理事長は、企画を聞いて「大歓迎だった。くつろげる空間として道路を活用するアイデアや企画は自分たちから出すことはなかなかできなかった」と明かす。渋谷区の報告によると、2018年度からの社会実験によって設置した仮設歩行空間と歩行者のための休憩および「たまりスペース」(歩行者滞留空間)*1の利用者・通行者は少数にとどまっており、歩行空間利用促進に向けてのアイデアや企画が求められている状況だった。

*1 宮益坂中央部の横断歩道付近の第一車線に仮設構造物(ガードレール)を一年を通じて設置することで、より広い歩行空間を確保し、空間内にベンチや花壇を備えることで歩行者が休憩することができる滞留空間とする試みである。

 菅野氏は「2020年のオリンピック・パラリンピック開催を見据え、このような市民主体のアクションが通行者や利用者の美観意識を向上させ、街のゴミ問題などの解消にも役立つのではと考えた」と話す。

写真中央は渋谷宮益商店街振興組合理事長菅野英雄氏。左がソトノバ共同代表理事の石田祐也氏、右は同じく共同代表理事の泉山塁威氏(写真:小林直子)
[画像のクリックで拡大表示]

自分たちの街でやりたいことを自分たちの手で

 同所を選んだ理由についてソトノバの石田祐也共同代表理事は、渋谷区が「渋谷駅中心地区まちづくり指針 2010」において、「めぐり歩いて楽しい回遊空間」の創出を目指していることを掲げ、歩行空間確保や道路空間充実に向けた取り組みを推進中であることを挙げた。

 常態化した路上駐車などが道路・交通課題となっていた宮益坂では、渋谷区が「歩行者中心の道路空間実現に向けたファーストステップ」として、第一車線を占有する路上駐車の削減に向けた社会実験を2017年から実施中だ。さらに2018年度には、前述の「たまりスペース」(歩行者滞留空間)などの社会実験も行っている。

 石田氏は、このような状況に加えて、街路樹が作り出す木陰や、古くから大山街道として渋谷の街の目抜き通りとして栄えてきた宮益坂のポテンシャルに目を付けたという。今年5月、渋谷区の土木部道路課へ「Park(ing)day」の実施について相談に訪れたところ、渋谷宮益商店街振興組合と渋谷警察署を紹介され、協力を得て実現したという流れだ。

 実施にあたっては、渋谷警察署へ道路使用許可申請を渋谷宮益商店街振興組合名義で提出した。企画と運営は、ソトノバが運営する「ソトノバスタジオ タクティカル・アーバニズムクラス:Park(ing) Dayのノウハウを学び、実践する!」の受講生ら11人が行った。同講座は、ソトノバが、「パブリックスペースに関する能動的な学習と交流の機会」として開催する人材育成の場。今年8月から全6回のスケジュールで行われた。長期的な都市戦略に基づいた仮設的実践を指す「タクティカル・アーバニズム」(Tactical Urbanism)の実践例として、世界で同時多発的に行うアクションである「Park(ing) Day」を実施し、そのノウ・ハウを体得する、という内容だ。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
当日の運営を担ったソトノバスタジオ タクティカル・アーバニズムクラス」の受講生の皆さん(写真:小林直子)

 今回の渋谷宮益坂での「Park(ing) Day」実施のために、開催場所(宮益坂2カ所)の現地視察を経て、当日に使用するファニチャーなどのプランニング(デザイン、コスト、ポータビリティ)と購入・制作を行ったほか、道路使用許可申請に必要な申請書類を受講生が自ら作成したという。実施コストは約12万円。同講座料の一部から捻出されるほか、ソトノバが制作した「Park(ing) Day」のTシャツなど関連グッズの売り上げを充てる予定だ。一部の家具や人工芝はソトノバ所有のものを使用した。

 空間演出については、歩行者が立ち止まって休息できるような快適な滞在空間を形成するとともに、将来的な整備に向けた道路空間の新しい使い方を提示することを課題としてプランニングした。地域住民、就業者、来街者の交流の拠点としての機能も想定した。また、宮益坂の歴史や地形の特徴を事前に調査したうえで宮益商店街のPRや新たなイメージの発信に寄与することも前提としたという。

 「自分たちが自分たちの街でやりたいことを自分たちの手で実現する知識と方法を持つ人を育てていきたい。今回のイベントを目撃した人たちが自分たちの街でもやってみたい、と広がっていくことが次のステップだ」――。石田氏は、10月1日に開催された「Park(ing) Day2019渋谷宮益坂・実施発表会」で、このように語った。“目撃した人たち”はもちろん、今回、渋谷でPark(ing) Dayの設置現場を経験した受講生の各地での活躍にも期待したい。

修正履歴
1ページ目2枚目写真キャプションの「風鈴」を「風車」に、本文の「両車線2カ所の路上駐車帯」を「両車線2カ所の」と訂正しました。お詫び申し上げます。また、主催者より実施コストについて追加情報の提供があったため、2ページ目に「一部の家具や人工芝はソトノバ所有のものを使用した」という情報を追加しました。 [2019/10/08 15:50]

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/report/100400204/