日本の人口が9年連続で減少する中、人口が増え続けている大都市の代表的存在が福岡市だ。政令市同士で比較すると、人口増加率は川崎市に次いで2位。年少人口(1-14歳)の増加率については圧倒的な差をつけて第1位だった(2018年1月1日時点・住民基本台帳ベース:関連記事)。今、日本で最も勢いのある都市の1つと言ってもいいだろう。そんな福岡市で注目を浴びている施策に、スタートアップ支援がある。この施策も人口の流入に一役買っているといえそうだ。同市で企業誘致を担当する山下龍二郎氏(福岡市経済観光文化局 創業・立地推進部企業誘致課 企業誘致係長)に話を聞いた。

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福岡市経済観光文化局 創業・立地推進部企業誘致課 企業誘致係長の山下龍二郎氏(写真:日経BP総研)

――全国的には人口減少時代に突入した近年も、福岡市では人口の増加が続いています。スタートアップの創業支援や誘致、ITエンジニアのUターン・Iターン振興なども、人口増を後押ししているように見えます。人口問題とからめた視点から、スタートアップ支援や企業誘致について、市の考え方を教えてください。

  福岡は街がコンパクトにまとまっていて、都市機能と自然が近距離にあり、暮らしやすいと思います。飲食産業も盛んで全国的に好評。空港も近く便利で、海外(東アジア)が近いという地の利もあります。ただ、「交通の便がいい」「料理がおいしい」ということだけでは人は増えません。まず、仕事がなければ。では、企業はどうしたら福岡に拠点を設けようと考えてくれるのか。やはり、拠点を担える人材が確保できることが重要です。

  高島宗一郎市長が「スタートアップ都市」を宣言したのが2012年9月。以降は振興策をいっそう充実させてきました。2014年には「グローバル創業・雇用創出特区」として国家戦略特区の指定を受けました。この特区制度の下、スタートアップの法人減税や外国人創業人材などの受け入れ促進(スタートアップビザ)など、企業立地を後押しする制度を次々に実現しています。

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福岡市の人口推移(1970~2017年。総務省統計局、総務企画局企画調整部統計調査課の資料を基にグラフ化)

  2017年には、若者に人気のエリア・大名にスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」を開設しました。閉校になった大名小学校の校舎を利用したもので、シェアオフィスやカフェ、福岡市雇用労働相談センターなどで構成しています。3DプリンターのあるDIYのアトリエも設けました。講堂は最大およそ200人収容のイベントスペースに生まれ変わっています。シェアオフィスは現在、170社が入居していて、空き枠が出るたびに入居希望が殺到して毎回抽選になるほどの人気ぶりです。

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Fukuoka Growth Nextの外観(写真:福岡市)

  AIやIoTなど、今後成長が期待できる技術分野には、市内の企業や大学が連携して新サービスの創出などを検討するコンソーシアムを立ち上げました。現在は福岡AIコミュニティ、福岡市IoTコンソーシアムがそれぞれ活動中です。

  さらに、こうした新技術の実証実験を市内で行いやすくするため、一元化した市の相談窓口をつくり、民間からの提案を広く募っています。

――企業誘致の実績はどうですか。

  2017年度まで5年連続で、成長分野の企業が50社以上、市内に新たに立地しました。市が成長分野と位置付けているのは、クリエーティブ産業やコールセンター、健康・医療・福祉などです。

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福岡市への企業立地実績(2008~2017年度、資料:福岡市)

――LINE Fukuokaの本社や、ピクシブ、メルカリといった著名なIT企業の拠点が、この5年以内に次々と市内に開設されていますね。最も効果が大きかったと思われる施策は何でしょう?

  IT企業は横のつながりが強いので、集積が集積を呼ぶところがあります。先に進出した企業が成功を収めていることが何よりのフックになっているように思います。ですから、誘致後の広がりについては、実は施策による効果ばかりではないのかもしれません。