自治体と協力して交通網形成計画を策定

みちのりHD傘下の関東自動車が「大谷観光一日乗車券」を販売。大谷地区は巨大な地下空間や奇岩など、観光スポットを多く擁する(資料:関東自動車)
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 こうした新たなテクノロジーによる新サービスを模索する一方、みちのりHDが取り組んでいるのが、ルートやダイヤの最適化など、従来のオペレーションの見直しだ。

 例えば、常陸太田市では地域のバスサービスの統合を推し進めた。同市では従来、路線バスや無料通院バス、コミュニティバス、スクールバスが重複して運行していたが、運行日やダイヤ・本数、運賃体系がバラバラで分かりにくい状態だった。これを路線バスに統合して平日は毎日運行し、運賃は3段階制に変更した。松本氏は「当社の事業だけでなく、社会全体の生産性が高まった」と手ごたえを語る。

 栃木県・大谷地区では、観光客の路線バス利用を促進している。「大谷観光一日乗車券」と銘打って、路線バスのJR宇都宮駅―大谷(立岩)間の1日フリーパスを発売。大谷資料館の入場料と大谷寺の拝観料もセットにした券で、個別に支払う場合よりも割安の価格に設定している。券の売れ行きは3年で1.5倍まで伸長した。

 また、みちのりHDグループがサービスを展開するエリアでは、自治体と協力して、地域公共交通網形成計画を策定し、交通ネットワークの再編に取り組んでいる。全国で50を超える県や市町村と連携しており、八戸圏域の8市町村、日立市、常陸太田市との地域公共交通網形成計画・再編実施計画は国土交通大臣の認定を受けた。

 さらに今後は、オープンデータを推進したいとする。みちのりHDは現在、リアルタイムのバス位置を「Googleマップ」や「ジョルダン」といった提携サービスに開示している。松本氏は「日本ではオープンデータの取り組みが遅れている。今後は標準的な情報フォーマット(GTFS)でオープンにして、提携先に限らず、すべての事業者が自由にデータにアクセスできるようになるのが理想だ」と話した。

 松本氏は次のように抱負を述べて、講演を締めくくった。

 「これまで地道な活動やマーケティングで、移動需要を掘り起こし、収益性の改善につなげてきた。今後、新しいテクノロジーを活用した新たなモビリティサービスとの両輪で生産性を高めていけば、人材や設備に継続的に投資ができ、結果として地方の公共交通を維持でき、交流人口の増加も望めるはずだ。使命感を胸に、自治体や現場のスタッフと共に、地域交通の一翼を担っていきたい」