技術の進展に応じたルールの整備

満員だったディスカッションの様子(写真:行友重治)

 スマートシティで利用される新技術も多いが、現状の法律が追い付いていない。これまで想定されていなかった行為に規制をかける新ルールについても意見が出た。

 内閣府の吉川氏は、「今後進展する自動走行や、パーソナルデータの管理・保護などでは新たなルールが課題になっている。どういう法律が必要か、各省庁とスケジュールを含めて検討したい。並行してプロジェクトなどを通じて、実践を積み知見を蓄えることが重要だろう」と述べた。

 経産省の眞柳氏は、走行中の車両から収集可能なデータに言及した。

 「スマートシティでは、コネクト化(つながること)をキーワードにしている。走行中の車両データが取得できれば、それを活用した推奨ルートの提示による渋滞緩和が実現できる可能性がある。ただ、その時、どこまでデータを出すのか、というルールづくりは必要になる」(眞柳氏)。

 総務省の佐藤氏は、「スマートシティにおけるセキュリティ面で留意すべきなのは、サイバー空間における脅威だけでない。あちこちに取り付けたセンサーを故意に操作して異常なデータを与えるという懸念が指摘されている」と述べた。また、総務省内ではスマートシティにおけるセキュリティに関連するガイドラインの整備を開始しているという。

データ活用を持続成長可能な都市運営に役立てるために

 一方、スマートシティのアーキテクチャには、データ活用や相互運用性の向上による高度な課題解決と効率的な都市運営が期待されている。

 国交省の酒井氏は、「国交省では、新しい技術やこれまで手に入らなかったデータをもとにした課題解決をスマートシティで目指している。パーソントリップ調査などで得られた動的データはシミュレーションによる駅前広場の整備や賑わいの創出などに活用できる。『スマートシティでは何の技術を使うか』という問われることも多いが、大事なのはどのような課題を解決したいのか、という課題認識だ。まずは、まちの課題をしっかりとらえる。そして、技術やデータをいかに活用するのかと論考するステップが重要だ」と指摘した。

 スマートシティの推進では、一部ではなく、様々な立場から多くの人に参加してもらうことが持続的な発展において重要になる。特定の誰かが得をする、ということではうまくいかないことがディスカッションから伺えた。この観点から、いくつかの課題も指摘された。

 例えば、バスとタクシーの特性を併せ持つオンデマンドバスのような新たなモビリティサービスは、縦割りの業法ではカバーしにくいことが指摘された。また、交通事業者が保有するデータが事業者を超えて利用ができれば、バス、鉄道、タクシー、シェアリングサイクルなどの移動手段の選択から決済までをシームレスにつなぐ情報提供サービスが可能になることは明らかだが、既存事業モデルとの兼ね合いなどから、すべての事業者が各自保有するデータのオープン化に前向きとは限らないという。事業者側にデータを出すメリットをもたらす、インセンティブ設計やガイドラインの整備の必要性も言及されていた。

 総務省の吉田氏は、「『データ利活用型スマートシティ』では、大企業だけでなく、中小・ベンチャー企業にも参画を促している。マネタイズは常に課題だ。初年度は補助金をつけることができても、いずれは経済的に自立していくことが望ましい姿だ。そのためにはスマートシティを担う地域のコミュニティづくりが重要だと考えている」と述べた。

 経産省の眞柳氏は、「移動サービス単体ではなく、各地域の経済活動や移動先であるショッピングセンター、病院、フィットネスクラブなどと連携したパッケージ全体でビジネスとして成り立つようにしたい。プロジェクトに参画する地域の方やメーカーなど幅広い関係者に参加してもらおうと働きかけている」と述べた。

 パネルディスカッションで司会を務めたインターネット協会 副理事長の木下剛氏は、「バルセロナやトロントが先駆けてスマートシティを打ち出した大きな理由には、財政の健全化という課題があった。日本の各自治体も財政をはじめ、様々な課題を抱える。地域の特性を生かした官民の連携が解決には必要だ」と述べた。