公共スポーツ施設の厳しい施設運営の現実

日本政策投資銀行の桂田氏(写真:小口 正貴)
日本政策投資銀行の桂田氏(写真:小口 正貴)
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 民営スポーツ施設の取り組み紹介に続き、最後に登壇したのは、日本政策投資銀行地域企画部参事役の桂田隆行氏。野球スタジアムを中心に投資を行ってきた経験から、桂田氏は「日本の大型スタジアムは10年ほど新規施設があまり建設されていない。しかし今、ラグビーワールドカップ、オリンピック、バスケットボールのプロリーグのスタートなど、スタジアム、アリーナ建設の機運が高まってきている」と現状を分析。その上で「日本の実際のアリーナの収支を知ってほしい」(桂田氏)と語った。

 日本政策投資銀行の調査によると、一般的な体育館に代表される日本の公共スポーツ施設の平均的収入は年間約6000万円。スタジアム(球場)を加えるとさらに下がり4900万円ほどになるという。一見大きな金額に思えるが、支出平均は約1億2000万円となっており「50%ほどの収入しかない。儲かりにくい施設だというのが現状だ」(桂田氏)。

 公共スポーツ施設の儲かりにくさの一例として、桂田氏は横浜文化体育館の2014年度の収支を挙げた。同体育館は2014年度、50万7000円の黒字だったが、収入のうち約7000万円が横浜市からの指定管理費であり、この金額を除くと6900万円の赤字となる。2014年度は利用日数351日と高稼働率であったが「(公共スポーツ施設の)現在のやり方では、これぐらい厳しい現実がある」(桂田氏)と指摘する。

 桂田氏は、米国のステイプルズ・センター、英国のO2アリーナ、スペインのパラウ・サン・ジョルディといった例を挙げ、「スポーツ施設の収益性を高める事業手法を考えていく必要がある」(桂田氏)と述べた。

 具体的には命名権や広告、プレミアムルームなど、契約上で期間・金額が定められた収入(COI:Contractually Obligated Income)の確保、建設費の圧縮、イベント運営に長けた人材の育成、多機能複合型施設の推進などだ。一方で、まちづくりと連携してスポーツ施設がもたらす効果を織り込んでいくことも1つのやり方ではないかと話した。