茨城交通、自治体とタッグでバス改革

 茨城交通の任田社長は、自治体との協働で公共交通の維持に取り組んでいる。同社は2019年5月に日立電鉄交通サービスと(旧)茨城交通が経営統合。現在は14市町村にまたがって、サービスを提供している。「少子高齢化と過疎化が進む地域で、公共交通の維持は大きな課題。それには自治体との協働と、新しいテクノロジーやサービスによる効率・利便性の向上が何より大切だ」と語り、東海村と常陸太田市の事例を紹介した。

みちのりホールディングス傘下の茨城交通の任田社長(写真:赤坂麻実)

 東海村では利用者の減少に伴い、路線バスの区間を一部廃止し、無料循環バスとデマンド型乗合タクシーを導入していたが、財政負担の増加が課題に。そこで「2015年に廃止路線の復活を含め、路線を再構築したところ、住民の外出機会を増やすことができた」(任田社長)。路線再編後2年で乗合バスの利用者数がデマンドタクシーを抜き、2018年度には再編前の2014年度に比べてタクシー、バスの利用者合計が2.5倍に。「タクシーの利用者を奪うことなく、乗客を増やせた」という。

 路線の工夫だけでなく、バスの主な乗客層にも積極的にアプローチしている。2017年には、バスの乗り方が分からなくて利用しにくいという高齢者のために、「買い物ツアー」として乗り継ぎ体験ツアーを実施した。参加者はスタッフから運賃やICカードの使い方について説明を受けながらバスを乗り継ぎ、スーパーマーケットや道の駅での買い物を楽しんだ。任田社長は「心理的ハードルを下げたかった」と狙いを語る。

高齢者のバス利用の心理的ハードルを下げる取り組みも(茨城交通・任田氏の資料より)
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 通学ニーズを捉えるため、新年度には学校でバスの通学定期券を販売する。「校内に出張販売のスペースをお借りする。小中高大、専門学校など合わせて50校で実施している」(任田社長)。2018年実績をみると、高校生の数は2010年比で9%減っている中、定期券収入は31%伸びている。

 常陸太田市では、2016年に高速バスを使った貨客混載事業を開始した。地域農家で朝5時前に収穫した農産物を、朝8時に「道の駅ひたちおおた」を出発するバスに載せ、その日の昼頃には東京・中野のスーパー各店で販売する。任田社長は「“朝どれ野菜”として新鮮なまま販売できるので、農家の新たな販路開拓になる。市の交流人口も増える」と効果を説明する。