3つの論点で渋谷を再定義

 次に門脇氏が「都市空間の襞(ひだ)性」を挙げた。門脇氏は「建築家として渋谷の地形を見ると、水が削って作った谷が入り組んだ襞が筋状に走っており、歩行・移動する人々の方感覚を失わせることが分かる」と渋谷という土地の特性に着目。そして、「歩く先の空間が見通せない地形が渋谷にとっての大きな強みだ」と続けた。

 その具体例として、常に歩行者でにぎわっているスペイン坂などを挙げながら、「ショッピングモールのなんばパークスや六本木ヒルズなども同じ構造で設計されており、歩行中に道が曲がりくねり、先が見通せない状況では自分が動くことで正面にお店が現れてくる。これが人の回遊性を増す空間の効果であり、谷の襞に沿って小規模な店舗が数多く存在するのに適した地形だ」(門脇氏)と、渋谷の強みを解説した。

門脇耕三氏(写真:小林直子)
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 田原氏は「渋谷らしさの再定義にかかわる論点」として、次の3点を提示した。論点(3)の「クリエイティブ・クラス」とは、創造的事業に従事する人々のことで、米国の経済学者/社会科学者のリチャード・フロリダ氏が定義した言葉だ。

  • 論点(1)今でも若者の街か?
  • 論点(2)オフィスの「郊外化」と「都心回帰」
  • 論点(3)新しい「職住近接」とクリエイティブ・クラス

 国学院大学での授業で渋谷や代官山をフィールドに現地調査をしたり、ボランティア活動を行ったりする中でまちづくりを考えているという田原氏は、論点(1)の「今でも若者の街か?」という点について、同校の学生や渋谷の街にいる20代の若者を対象に定期的に調査を実施していると明かした。「なんと7割の学生が渋谷の街を居心地が悪いと感じ、物価が高い、居場所がないと答えた」(田原氏)と驚きを示しながら調査結果を明かした。調査では、「渋谷では遊ばない」「渋谷が嫌い」「関心がない」との答えが返ってくることも少なくないという。

 この原因の一つとして田原氏は、「渋谷の再開発のターゲット自体が大人の街へとシフトしており、若者は自分たちがターゲットの主役と感じられていないのでは」と推測する。一方で、「渋谷区を一番住みたい街として挙げる若い女性は多い」という調査結果を挙げ、「必ずしも若い人を引き付けられない街とはいえない」との見解を示した。

田原裕子氏(写真:小林直子)
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