渋谷は今でも「若者の街」なのか

 各氏の発表後、セッションは田原氏が示した3つの論点についての議論に移った。

 宇野氏はまず、田原氏が挙げた論点(1)「今でも若者の街か?」について、次のようにコメントした。「渋谷が若者の街であるというのは、90年代に若者だった自分たち中年世代が、今の若者に押し付けているイメージだ。現代はポップカルチャーが生み出される構造自体が変化していて、新しいカルチャーはもはや都市ではなく、ウェブ(インターネット)から生まれている。渋谷はその構造変化の影響を受けている」。

 次に、宇野氏は論点(2)「オフィスの『郊外化』と『都心回帰』」と論点(3)「新しい『職住近接』とクリエイティブ・クラス」に絡めて、次のように語った。

 「現代の、特にクリエイティブな仕事に就く人々は、共働きが多いことも影響し、職住近接を求めて山手線内側、さらに言えば南部に向かう。このため、渋谷が『若者の街』よりも『中高年が暮らす(労働)現役世代の街』になってきていることに注目すべきではないか」

 「物の消費で自己実現することが格好悪いという価値観に変った。渋谷の街はこの価値のシフトに合わせたゲームチェンジを考えなければいけない時期にある」

 この指摘に対し伏谷氏が「消費の価値の捉え方が変わった。ショッピングの目的が無くても、ぶらっと出かけるような街をどうつくるかが課題だ」と応じた。門脇氏は「ある世代と都市文化がリンクして来たのが東京の特徴。そういう観点からすると、ウェブカルチャー世代は居場所となる街がないのではないか」とコメントした。

 また、「渋谷は再開発のビジョンで多様性を大事にすることを掲げているが、多様性を定義すること、多様性がある街であることを示すのは難しいのではないか」と伏谷氏が新たな疑問を提起した。これに対して門脇氏は「ダイバーシティ(多様性)はごちゃまぜ、ミクスチャー。都市空間の襞性を持ち、襞にへばりつくようにして色々なものがごちゃまぜに混在できる地形の渋谷にはやはり適しているし、強みだと思う」との見解を改めて示した。

 さらに門脇氏は「この谷が入り組んだ襞性の空間を持つ渋谷は、面的再開発が簡単ではないために小規模な商店が残る。ここが興味深い」と話した。そして、消費文化から創造文化へという時代においては、「小売の商店だけでなく、スモールオフィスなどのクリエイティブな活動をする起業家が集積するにも適している街である」との持論を展開した。一方で、駅前エリアの面的な大規模再開発について「各々のまちの特性や特徴を作り上げている、小さな商店や文化発信の場所が地価高騰で消えてしまうことが多い」と懸念を示した。

コーディネーターを務めた宇野常寛氏(写真:小林直子)
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