キーワードは「クリエイティブ・クラス」と「職住近接」

 門脇氏が懸念する大規模再開発の弊害については、渋谷の街が大規模再開発された臨海地域などのタワーマンションが林立するエリアとは異なる、多様な住宅ストックやリソースが存在していることに田原氏が注目。クリエイティブ・クラスが好む街は、仕事と生活の区別がシームレスな暮らし、つまり「職住近接」というライフスタイルが実現できる街であり、渋谷にはそのポテンシャルがあるのではないか、という議論が展開していった。

 宇野氏は、渋谷という街を「駅周辺だけでなく半径3kmぐらいの広域圏」で見て考えることを提起した。これを受けて伏谷氏が「駅と住まいや仕事場などの目的地とをつなぐストリートの楽しさや歩きやすさの仕掛けがあれば、人は自然に駅ビルやその周辺からもっと外あるいは路地を回遊するようになる」と語った。

 門脇氏は「都市空間の襞性は谷沿いに『しみじみした店舗』を残しつつも、谷を歩いた行きつく先の正面(中央部)には世界的な観光名所と化しているスクランブル交差点や、ハイソな大規模商業施設などにも出合え、合理的な消費行動も可能にする。そんな魅力を渋谷は持っている」と分析した。

 さらに門脇氏は「そういった、クリエイティブ・クラスの好むライフスタイル『職住近接の街・渋谷』がまだブランディングされておらず、世間に見えてない。これをつくることができたら、渋谷はもっと変わるのではないか」と問いかけた。

「自分が主役」と感じられる街へ

 最後は、まちづくりやエリアマネジメントの視点からの議論となった。

 田原氏は「多くの若者が共有する価値観は絆(きずな)。つながることが大好きで、自分だけの何かやストーリーに価値を置く」との見解を示した。伏谷氏は「渋谷がこれからも若い人の街としての可能性を感じさせるのは、まちづくりの現場のあり方だ。まちづくりの現場においてみんなで話し合ってまちを作ろうという意識による活性化が多く見られる。その流れから若者の街としての面が再び見えてくるのではないか」と推測した。 

 宇野氏は「かつては自分が主役になれる時間は買い物だったが、今の時代は住む、働くというシーンで自分が主役と感じるのだ」と発言。今のライフスタイルのトレンドと「職住近接の街・渋谷」との親和性の高さを示唆し、セッション1の議論は終了した。