2020年度は新型コロナウイルスの感染が全国に広がり、自治体の行政視察にも大きな影響を及ぼした。感染防止のため、視察の受け入れを休止したことのある自治体が約4割あったほか、受け入れ地域や視察人数を制限した自治体もあった。一方、3密を避けられる「オンライン視察」を実施する動きが一部の自治体で見られた。

 日経BP 総合研究所が運営するウェブサイト「新・公民連携最前線」は、全自治体を対象に、コロナ禍における対面/オンラインの行政視察受け入れ状況を尋ねるアンケート調査を実施し、結果を取りまとめた(調査概要はこちら)。

 まず、行政視察を受け入れる側の対応として、コロナ禍の影響があったかどうかを尋ねた。この問いに対し、41.0%(289団体)の自治体が視察の受け入れを「休止した/休止した期間があった」と回答している。「受け入れ地域の制限をした/制限をした期間があった」「人数制限をした/制限をした期間があった」という回答も、それぞれ15%以上あった。感染を避けるために、視察の受け入れを自粛・制限している様子がうかがえる。

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 一方、コロナ禍の下でも視察対応に「変更なし」とする回答が37.2%(262団体)あり、2番目に多い結果となった。視察対応が「変更なし」でも、実際に視察を受け入れたとは限らない。「その他」(112団体、15.9%)と回答した自治体のコメントを見ると、半数以上は「2020年度は視察の依頼がなかった」としており、「依頼がなかったから視察対応をどうすべきか検討していない」(つまり視察対応に関して「変更なし」の状態)というコメントが多かった。

オンライン視察の9割は「ウェブ会議形式」

 コロナ禍において、会議や出張をウェブ会議に置き換えることは有効な感染防止対策となる。こうした「オンラインによる視察を受け入れた」という自治体は68団体(9.6%)あった。

 オンライン視察を受け入れた際の実施形式は、「ウェブ会議システムによる説明(口頭およびスライド資料による説明)と質疑応答」が圧倒的に多かった。オンライン視察を受け入れた68の自治体のうち、61団体(89.7%)がこのウェブ会議形式でオンライン視察を実施している。視察が会議室の中だけで概ね完結するのであれば、ウェブ会議形式で十分な情報を得られるだろう。「事前のメールによる資料送付+電話」という実施形態もあった。

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 一方、視察対象が「施設」の場合、従来は施設内を移動しながら説明を行い、質疑応答する形となるだろう。この視察形式をそのままオンライン化するのは容易ではないが、これに対応した自治体がいくつかあった。「ウェブ会議システムのライブ動画配信を利用した施設・現場案内(施設内を移動しながら映像を共有)」を実施した自治体が5団体(7.4%)、「あらかじめ撮影した動画による施設・施策現場の説明」を実施したのが4団体(5.9%)である。


オンライン視察件数のトップは「豊明モデル」

 オンライン視察を受け入れた施策や施設については、それぞれの視察件数も聞いた。その中で最も多かったのは、愛知県豊明市の「地域包括ケア 豊明モデル」だった。オンライン視察件数は230件と断トツ。豊明モデルは2019年度の「視察件数ランキング」でも総合1位(視察件数271件)になっており、引き続き大きな注目を集めていることが分かる。

 豊明モデルの次にオンライン視察件数が多かったのは、福島県会津若松市の「スマートシティ会津若松」(36件)や福井県永平寺町の「永平寺町自動運転『ZEN-drive』」(10件)である。これに続くオンライン視察件数はいずれも1桁にとどまり、2020年度に5件以上のオンライン視察を受け入れた事業は計9件だった(オンライン視察の様子については、後日公開予定)。

オンライン視察を実施した事業と視察件数
名称 自治体名 オンライン視察件数
地域包括ケア 豊明モデル 豊明市(愛知県) 230
スマートシティ会津若松 会津若松市(福島県) 36
永平寺町自動運転「ZEN-drive」 永平寺町(福井県) 10
「demotech(デモテック)」戦略事業 取手市(茨城県) 9
GIGAスクール構想に関する取り組み全般 奈良市(奈良県) 8
つくば市先進的ICT教育 つくば市(茨城県) 6
「牛久市文化財保存活用地域計画」の策定 牛久市(茨城県) 6
若者総合政策(若者議会)について 新城市(愛知県) 5
スマートシティ推進事業 加古川市(兵庫県) 5

 上記の視察対象の事業を「施策」か「施設」のどちらかに分類すると、図書館や新庁舎といった「施設」に対するものはない。基本的に「施策」を中心とするものが並んでいるといえるだろう。「施策」のオンライン視察は、プレゼンテーション資料による説明や質疑応答、ディスカッションによって十分な情報を得やすいが、「施設」のオンライン視察だと、施設を訪れて直接見て回るほどの情報量を得られないからとみられる。

コロナ禍の収束後もオンライン視察を継続するか?

 オンライン視察はコロナ禍への対策としてスタートしたが、コロナ禍が収束した後でも、視察する側には現地までの移動時間や旅費がかからない、といったメリットがある。そこでオンライン視察を受け入れている自治体に今後の意向を尋ねてみると、「コロナ禍収束後は休止/廃止予定」とする回答は4.4%にすぎず、「収束後も継続予定」と考える自治体が44.1%を占めた。

 ただし、最も多い回答は「未定/不明」で、半数を超える。オンライン視察の受け入れ方について、何らかの不満や課題があると感じているのかもしれない。

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「全国自治体・視察に来てほしい先進事業」 調査概要

調査名:コロナ禍の中での行政視察受入れと先進施策に関する調査
調査対象:都道府県および市区町村
調査方法:調査票を郵送。回答は専用のウェブサイトまたはFAXで回収
調査期間:2021年7月27日~8月27日
回答数:705団体(回答率39.5%)

■オンライン視察の調査

 自治体の公共サービスや施設、行政施策等のうち、2020 年度に地方自治体(地方公共団体)または地方議会議員からのオンライン視察を年間5 件以上受け入れた取り組み(事業、サービス、施設、施策等)を、視察件数の多い順に3つまで挙げてもらった。

■視察に来てほしい先進事業

 今後コロナ禍が収束し視察の行き来が復活したときに、「他の自治体の参考になる」「ぜひ視察に来てほしい」と思われる先進的な公民連携の施策や施設を、自治体ごとに最大3件まで挙げてもらった。

 調査では、視察数の対象を「自治体職員または地方議会議員」によるものとし、「国の機関、独立行政法人、外郭団体などによる視察」と「自団体の職員および議会議員による視察」を除いて回答してもらった。ただし、各自治体の回答には、視察者の属性を区別できていない視察が含まれている可能性がある。

■回答一覧

 具体的な有効回答は、自治体別に「視察に来てほしい先進事業」として一覧表を公開した。


この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/report/111200298/