ビッグデータやAIなどの技術進展、そして官民データ活用推進基本法、統計改革を背景に、国は、証拠に基づく政策立案(Evidence Based Policy Making。以下、EBPM)の取り組みを推進する。EBPMは国だけでなく、地域が直面する政策的な課題を的確に把握し、有効な対応策を選択する自治体でも不可欠になっている。
EBPMに本腰を入れる自治体の1つが、前橋市だ。2017年11月、前橋市は、東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)、帝国データバンク、三菱総合研究所などと、「ビッグデータを活用した地域課題の見える化及び政策決定の変容にかかる連携協定」を締結した。この協定の中で目指す自治体の姿が「超スマート自治体」と称される。そこではどのような取り組みが行われているのか。連携協定に加わるCSIS助教の秋山祐樹氏が会長を務める任意団体、マイクロジオデータ研究会の第12回会合をリポートする。
地域の的確な理解に各種統計情報や地理空間情報が役立つ
東京大学空間情報科学研究センター(以下、CSIS)助教でマイクロジオデータ研究会会長の秋山祐樹氏は、「マイクロジオデータとは、各種デジタル地図データやPOI(Point of Interest:関心地点)データ、モバイルデータ、Webから取得できるデータなど、空間的に高精細だが集計されていない時空間データの総称を指す」と説明する。「近年、個々の建物、店舗、企業間取引などのビッグデータ、人の分布や動きなどに関わる幅広いデータが利用可能になっている」(秋山氏)。
そして、「超スマート自治体」(Government 5.0)とは、自治体自身が地域の現状を把握し,地域課題の発見・解決と,自治体・市民・企業の継続的なスマート化,さらにそれらを地域の経営的改善と個性的な地域の実現につなげるスキームのことを指す。(1)ミクロな地理空間情報(マイクロジオデータ)や、空間ビッグデータ(企業活動・取引情報、モバイル統計など) と、市民が持つ個人情報を用いた現状把握と共有、(2)個人情報を適切に流通させる「地域情報銀行」などを利用した地域の経営的な改善、(3)蓄積したデータ分析による地域運営支援などを通じた市民の意識改革といった、3段階のフェーズで課題解決を目指していく構想だ。今のところは、実現に向けた現実的なアプローチを探りながら、自治体の現場などで試行的に進めている段階である。
「超スマート自治体」ではEBPM(証拠に基づいて政策を立てること)が実践される。「限られた資源を使って自治体をうまく運営していくには地域を理解することが大切であり、各種統計情報や地理空間情報が重要になる」(秋山氏)というわけだ。