ステークホルダーとの目線合わせと納得感の醸成にエビデンスが不可欠

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前橋市の神保明彦氏

 前橋市での取り組みを発表した前橋市政策部未来の芽創造課主任の神保明彦氏によると、同市の山本龍市長は、将来的な市の人口や年齢構成の変化がもたらす行政課題の解決に向けて「地域経営」の推進を掲げているという。

 「地域経営とは、これからの地域課題の解決は、行政を頂点にして目指すのではなく、市民、企業・団体、行政それぞれが自分事として課題を捉え、自主的・自律的に、また連携して取り組むイメージだ。市役所は、主体的な活動を促し、つなぎ、支援する役割を担う。これを実現するには、さまざまなステークホルダーとの目線合わせ(議論の前提となる現状の共有)と、納得感の醸成(事業の効果とマイナス面の認識)が重要であり、ここにエビデンス(根拠となるデータ)が不可欠である」(神保氏)。

 そうした中、CSISなどとの連携協定(※)に基づくプロジェクトが始まった。神保氏によると、前橋市では現在、政策立案における推計・検証では、どのようなデータが具体的に必要なのかを精査している段階だという。

※ 2017年11月、前橋市は、CSIS、帝国データバンク、三菱総合研究所などと、「ビッグデータを活用した地域課題の見える化及び政策決定の変容にかかる連携協定」を締結した。連携協定期間は、2019年3月31日まで。本プロジェクトでの検討内容は、「地域の現状把握」「地域課題の見える化、問題意識の共有化」「課題解決手法(具体的行動)の検討、政策決定過程の変容」「データを分析する能力や人材開発」に関するものだという。この取り組みの報告が、連携協定に加わるCSIS助教の秋山祐樹氏が会長を務めるマイクロジオデータ研究会の第12回会合で行われた。

 プロジェクトで試行的に分析するのは、観光振興(赤城山訪問者の分析)と交通政策(市内の人の流れ分析)の2つだ。

 観光振興では、人手で集計・分析していた赤城山訪問客の時系列変遷を、携帯電話のGPSデータに基づいて推計・分析した。「短時間に集計できただけでなく、多くの人が訪れるエリアもより詳しく明らかになった。想定と違う人の流れに気づくことができたため、誰にどのようなタイミングでPRすればよいか、というより効果的な広報戦略の再考などに役立てられる」(神保氏)。交通政策では、パーソントリップデータをもとに人の流れを可視化することで、いつどのような交通手段(鉄道、バス、自動車、徒歩など)を用いているか情報が得られ、バス路線の再編検討などに活用できる手応えをつかんでいる。

 神保氏はこうした取り組みを踏まえて次のように述べ、プロジェクトのさらなる進展に期待を寄せた。

 「政策とは、『こうすればああなるだろう』という仮説の集まりで、『ああなる』ことが約束されたものではない。また客観的・中立的なものではなく、携わる者の価値判断や政治的なプロセスを通じてつくられる。そうした性格をもつ政策は、本来、目的と手段が体系づけられているべきものだ。しかし、現状は、市役所内の部署間の連携が乏しく複合的な課題に対する個別対応の政策が少なくない。マイクロジオデータなどを活用して政策立案に必要な情報を可視化したい。そして、市政を取り巻く将来の様々な変化を見据えて今後の政策のあり方を見直したい」

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前橋市が試行的に分析する見える化事例の1つが、交通政策(市内の人の流れ分析)だ(資料:前橋市)