「Beyond Health」2019年11月28日付の記事より

 日本における死亡原因の第1位、生涯に2人に1人が罹患すると言われるがん。しかし、実際にがんになるまでは自分ごととして捉えにくく、いざがんになると何をすればよいのか頭が真っ白になってしまうケースも多い。加えて“死に至る”印象が強いため、救いを求めるかのようにさまざまな情報を求め、かえって混乱してしまうこともある。

 がんに立ち向かうための適切な情報を届けるにはどうすればよいか。国立がん研究センターはこうした課題に対し、「図書館」との連携を推進している。具体的には、「がん情報普及のための医療・福祉・図書館の連携プロジェクト」を進めている。「第21回図書館総合展」(2019年11月12〜14日、パシフィコ横浜)では、「健康医療情報の地域資源としての公共図書館」とのテーマで報告を行った。

多様性のある図書館こそ情報発信に最適

 日本ではどこでも質の高いがん治療を受けられるように、全国各地の二次医療圏内にがん診療連携拠点病院を設置している。これらの病院にはがん相談支援センターが必ず設置されており、通院者でなくとも誰もが無料で相談できる。

 だが、ほとんどの人がその存在を知らないのが現状だ。国立がん研究センター がん対策情報センターの八巻知香子氏は「2013年の調査では利用したことがある人が1.2%、利用したことはないが、よく知っている人が5.7%で1割にも満たない」と述べ、かねてがん情報発信についての危機感を抱いていた。そこで「各地の図書館との連携により、日常の中で情報を知ってもらうことができるのではないか。それが公共図書館との連携を考えるに至った背景」と説明した。

国立がん研究センター がん対策情報センターの八巻 知香子氏(写真:小口 正貴、以下同)
[画像のクリックで拡大表示]

 「図書館なら、生活全般のさまざまな資料を取り扱っている。がん相談支援センターは地域によって偏在しているが、図書館は小さな町村にも存在している。そうした場所でも情報が届くメリットがあり、我々からすると新たな拠点づくりと言える。社会教育機関として医療機関ではできない分野にチャレンジできるなど、組み合わせの多様さもある。病気の診断や治療のために来る場所ではないからこその多様性だ。例えば子育ての情報を求める若い世代にも届けられる可能性が出てくる」(八巻氏)

 図書館にとっても、扱いにくい医療情報を整理して提供できるメリットがある。またリファレンス(図書館サービス)を通じて、医療や病気についての相談先の確保も可能なことから「身近な場所で背中を押してもらうことで相談の増加に結びつくのではないか。お互いの強みを生かし、届けたくても届かなかった人に情報を届けられると期待している」(八巻氏)とした。2019年9月末時点で、全国269カ所の図書館にがんに関する冊子パッケージ「がん情報ギフト」を寄贈しており、さらなる連携を深めつつある。