パシフィコ横浜で開催された「第21回図書館総合展」(2019年11月12日~11月14日)。13日には「Library of the Year 2019」の最終選考会が行われた。事前に優秀賞に選ばれていた4機関による公開プレゼンテーションが行われ、札幌市図書・情報館が大賞とオーディエンス賞をダブル受賞した。

 「Library of the Year」(以下、LoY)は、これからの図書館のあり方を示唆する先進的な活動を行う機関を表彰する賞だ。NPO法人知的資源イニシアティブ(IRI)が2006年に創設した。

大賞受賞の挨拶をする札幌市中央図書館館長の毛利泰大氏(写真:小林直子)

 11月13日、パシフィコ横浜で開催された「第21回図書館総合展」の会場で、LoY2019の最終選考会が行われた。優秀賞に選ばれた4機関(恩納村文化情報センター、京都府立久美浜高等学校図書館、県立長野図書館、札幌市図書・情報館。登壇順)が、それぞれ8分間の公開プレゼンテーションを行い、審査委員によって札幌市図書・情報館が大賞が選ばれた。また、同館は会場の観客による投票によるオーディエンス賞にも選ばれ、ダブル受賞という結果となった。

 このリポートではダブル受賞の札幌市図書・情報館と、学校図書館単独では初めてLoY優秀賞を受賞した京都府立久美浜高等学校図書館について、概要をお伝えする。

貸し出しをしない「課題解決型図書館」

 札幌市内には現在47の図書館施設が存在し、全270万冊の蔵書の中からいつでも予約が可能であり、どこでも受け取りできる図書館ネットワークが確立されている。その札幌市立図書館の中でも「かなり変わった末っ子」(札幌市中央図書館館長の毛利泰大氏)が、2018年10月7日に開館した札幌市図書・情報館だ。

札幌市図書・情報館のチラシ(資料:札幌市)
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 市内中心部、地下鉄大通り駅と直結する札幌市民交流プラザの1階・2階に整備された同館は、調査相談・情報提供に特化した「課題解決型図書館」だ。コンセプトに「はたらくをらくにする」「暮らしをサポートする」を掲げ、本の貸出は行わず、レファレンス・サービスを重点的に行っているのが特徴だ。

 同館の淺野隆夫館長は、「素早くモデルが変化するビジネス社会の情報化時代にあって、常に最新の本を館内に揃えておくことで、利用者が望んだ時にいつでも閲覧が可能になる」と、貸出をしない同館の方針を説明した。

 館内は「WORK(仕事に役立つ)」「LIFE(暮らしを助ける)」「ART(芸術に触れる)」の3つのエリアに分けている。原則的には文学、児童書、絵本は扱わない。棚づくりでは、国内の図書館ではスタンダードともいえる日本十進分類法(NDC)を用いず、16人の司書が4人ずつ4グループに分かれ、各グループに1人ずつ配置された行政職員が加わった1グループ5人体制で話し合いながら行っている。

 札幌市図書・情報館では、ビジネスや普段の暮らしに役立つセミナーやトークイベントを開催したり、起業・経営・法律などの専門機関による臨時相談窓口を定期的に図書館内に設置したりしていることも特徴の一つだ。これまでに、ここでの相談をきっかけに11人が起業にこぎつけたという。

 敷地面積は1500平方メートルで図書館としては小規模だが、開館1年足らずで来館者100万人を突破した。座席は約200あり、一部インターネットからの座席予約もできる。館内での会話も可能であり、併設のカフェの飲み物の持ち込みも可能という柔軟な運営で、新たな利用者層をも取り込んだと言えそうだ。

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(写真:小林直子)
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プレゼンテーションの様子(写真:小林直子)

 淺野館長は、利用者から「入り浸りたい」「この近くに住みたい」「税金を払っていてよかったと市長へメールした」といった好意的な声が寄せられていることを明かし、「本を借りる場所から、アイデアや解がどんどん飛び交う場所へと、図書館が変わってきている」と結んだ。