オンライン開催となった京都スマートシティエキスポ2021(2021年11月11~12日・アーカイブ公開は12月31日まで 主催:京都スマートシティエキスポ運営協議会)より、日経BP 総合研究所スペシャルセッション「地域課題解決のカギ~スーパーシティ/スマートシティへの取り組み」の模様を前後編に分けてお伝えする(後編はこちら)。登壇者は、京都府の山下晃正副知事、大阪府四條畷市の東修平市長、埼玉県横瀬町の富田能成町長、日経BP 総合研究所 戦略企画部長の髙橋博樹である。セッションの前半は、それぞれの自治体におけるスーパーシティ/スマートシティへの取り組みや、全国の自治体関係者への提言を発表した。

左から2番目が京都府の山下晃正副知事、右に向かって大阪府四條畷市の東修平市長、埼玉県横瀬町の富田能成町長、日経BP 総合研究所 戦略企画部長の髙橋博樹。左端はモデレーターを担当した日経BP 総合研究所「新・公民連携最前線」編集長の黒田隆明(写真:水野浩志)
左から2番目が京都府の山下晃正副知事、右に向かって大阪府四條畷市の東修平市長、埼玉県横瀬町の富田能成町長、日経BP 総合研究所 戦略企画部長の髙橋博樹。左端はモデレーターを担当した日経BP 総合研究所「新・公民連携最前線」編集長の黒田隆明(写真:水野浩志)
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 セッション前半ではまず、京都府の山下副知事がこれまでの経験を踏まえた問題提起を行い、続いて、四條畷市の東市長、横瀬町の富田町長、日経BP 総合研究所の髙橋がそれぞれの取り組みについて発表した。

理念・ビジョンを住民と共有できなければ何も始まらない

 京都府では、京都、大阪、奈良にまたがる自治体と共に「けいはんな学研都市(正式名称:関西文化学術研究都市)」を舞台に、スーパーシティ/スマートシティの先駆けとも言える新しいまちづくりを1980年代から続けている。1970年代の第1次オイルショックをきっかけに、京都大学総長を務めた奥田東氏が石油をはじめとする天然資源の限界を克服したいという問題意識から、1978年に奥田懇(関西学術研究都市調査懇談会)を設立。その懇談会に関西経済連合会が賛同し、1987年の関西文化学術研究都市建設促進法の公布・施行を経て、国家プロジェクトとして都市建設がスタートした経緯がある。

 京都府の山下副知事は、京都大学の人文科学研究所出身で国立民族学博物館を創設した梅棹忠夫氏が奥田懇に参加したときのことを、「後日、奥田氏から間接的に聞いたことがある」と振り返る。このとき梅棹氏は、「科学技術の活用は、技術オリエンテッドでは人類の幸福につながらないのではないか」と問題提起したという。例えば、日本人が持っている宗教観、自然との調和を重視する考え方、コミュニティを大事にするまちづくりなどの文化的な側面を考慮しなければ、人類が幸福になるような問題解決につながる提案はできないと訴えた。けいはんな学研都市の正式名称である関西文化学術研究都市に「文化」という文字が入ることになったのは、この梅棹氏の提言を受けた結果だ。そうしたことから、けいはんな学研都市では、研究所が集積する研究開発ゾーンの開発とまちづくりが並行して進められてきた。

京都府副知事の山下晃正氏(写真:水野浩志)
京都府副知事の山下晃正氏(写真:水野浩志)
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 けいはんな学研都市におけるこれまでの取り組みの1つに、東日本大震災(2011年)を受けて電気の安定供給を目指したスマートグリッドの実証実験がある。当初、実験に参加して消費電力などのデータを提供してくれる住民が少なかったため、京都府や地元市町村の担当者が一軒一軒訪問して説明したという。「未来のまちづくり、これから生まれる次世代への貢献という視点でご参加いただきたい」と丁寧に話をすることで、最終的に800世帯が実験に参加してくれた。この時の経験から山下副知事は、「スーパーシティにしても、スマートシティにしても、住民と理念・ビジョンを共有できなければ物事は始まらない」ということを痛感したという。

 京都府では現在、精華町、木津川市、京田辺市(いずれも京都府)と共同で、内閣府のスーパーシティ構想公募に「けいはんなサスティナブルスーパーシティ」を提案している。ここでは、目指したい社会像として「人生100年時代にふさわしく健康で充実したスマートライフ」を掲げている。

 これを実現するにはカルテ、健康診断の結果、生活情報など、プライバシーに関わるセンシティブな個人情報を、本人の同意を得て収集・利用する必要がある。山下副知事は「そのためには、(本人だけでなく)お子さん、お孫さんなど次の世代にも大いに役立つことを十分に説明しないといけないと考えている」と、住民の理解を得ることの重要性を強調した。