オンライン開催となった京都スマートシティエキスポ2021(2021年11月11~12日・アーカイブ公開は12月31日まで 主催:京都スマートシティエキスポ運営協議会)より、日経BP 総合研究所スペシャルセッション「地域課題解決のカギ~スーパーシティ/スマートシティへの取り組み」の模様を前後編に分けてお伝えする(前編はこちら)。登壇者は、京都府の山下晃正副知事、大阪府四條畷市の東修平市長、埼玉県横瀬町の富田能成町長、日経BP 総合研究所 戦略企画部長の髙橋博樹である。

左から2番目が京都府の山下晃正副知事、右に向かって大阪府四條畷市の東修平市長、埼玉県横瀬町の富田能成町長、日経BP 総合研究所 戦略企画部長の髙橋博樹。左端はモデレーターを担当した日経BP 総合研究所「新・公民連携最前線」編集長の黒田隆明(写真:水野浩志)
左から2番目が京都府の山下晃正副知事、右に向かって大阪府四條畷市の東修平市長、埼玉県横瀬町の富田能成町長、日経BP 総合研究所 戦略企画部長の髙橋博樹。左端はモデレーターを担当した日経BP 総合研究所「新・公民連携最前線」編集長の黒田隆明(写真:水野浩志)
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 セッション後編ではスマートシティ推進の重要な2つの論点「健康で幸福な人生100年時代のまちづくり~テクノロジー活用のポイント」「住民合意の創意工夫と課題~住民参加をどのように促していけばいいのか」について意見交換が行われた。

論点1
健康で幸福な人生100年時代のまちづくり~テクノロジー活用のポイント

 健康施策におけるテクノロジー活用については、まず横瀬町の富田町長が「小児科オンライン」を例にそのポイントを説明した。小児科オンラインとは、小児科の医師がLINEを通じて子育て中の母親の相談に乗るサービスである。横瀬町は実証実験を経て2018年に同サービスを日本で最初に採用した(関連記事)

横瀬町の富田能成町長(写真:水野浩志)
横瀬町の富田能成町長(写真:水野浩志)
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 小児科医による電話を使った相談サービスはこれまでもあったが、小児科オンラインには、LINEのビデオ通話やチャットを使って機動的に相談に乗れる強みがある。横瀬町には小児科医がおらず、小児科オンラインのようなサービスを導入する必要性は高かった。その後、出産前後の母親の相談に乗る「産婦人科オンライン」も提供を開始。現在は、中学生のメンタル相談に乗る心療内科にまでオンライン相談の領域を広げることを検討している。

「小児科オンライン」の概要(資料:横瀬町)
「小児科オンライン」の概要(資料:横瀬町)
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 小児科オンライン、産婦人科オンラインとも、導入は比較的スムーズに進んだ。これは、利用者はLINEの操作に慣れ親しんだ若い子育て世代であることが大きな要因であると考えられる。一方、高齢者を対象にLINEのような新しいテクノロジーを活用するサービスは、体感的には導入に苦戦しているという。「テクノロジーという言葉自体が、高齢者には否定的に受け取られてしまう。そこで、ITについては『人に優しい』という言葉を付けて、できるだけ抵抗感がないように説明している」(富田町長)。

 四條畷市は2021年3月から9月まで、保健師や看護師が対象者の自宅を訪問してICT機器を認知症サポート医とネット接続し、オンラインで認知症診断する実証実験を実施した(四條畷市の関連ウェブページ)

四條畷市の東修平市長(写真:水野浩志)
四條畷市の東修平市長(写真:水野浩志)
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 「初期の認知症患者は、自身を認知症と認めたがらず、病院に行くことを嫌がる。そこで、サポート医の先生と、自宅にいながらタブレット端末の画面を通じて話せるようにした」(四條畷市の東市長)。四條畷市では認知症初期集中支援チームを設置。包括支援センターの担当者から認知症の疑いがある高齢者の報告があった場合、支援チームが高齢者の家族と相談して自宅でのオンライン診断を実施する仕組みを整えた。

タブレットなどを活用して認知症初期集中支援をサポート(資料:四條畷市)
タブレットなどを活用して認知症初期集中支援をサポート(資料:四條畷市)
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 四條畷市では、様々な施策を組み合わせて認知症対策を進めている。テクノロジーは、施策の内容に応じて必要であれば採用する。同市の小学校では児童向けの認知症サポーター講座も毎年開催しているが、こちらは今のところITは活用していない。「息子や嫁から『認知症じゃないか』と言われるのは嫌でも、孫に言われたら(診断を受けに)行こうかなという気になる高齢者は多い。小学生に認知症のことを知ってもらうことで、そういった状況をつくっていこうと思っている」(東市長)。

テクノロジーと利用者の関係を見極める

 京都府の山下副知事は、テクノロジーが「利用者にどう使われるか」について、その重要性を語った。京都府が以前実施したメタボ予備軍をケアする食事指導の実証実験では、2通りの食事指導を比較した。1つは、参加者が1週間分の食事をスマートフォンで写真撮影して、それに基づいて管理栄養士が指導するやり方。もう1つは、ネット上に参加者が集まる「部屋」をつくり、自分がどんな食事をしているかを投稿してもらうことで参加者の意見交換を促す。さらに管理栄養士が「こういうふうにすると、もっと良くなりますよ」とさりげなくアドバイスを投稿し、コミュニケーションを活性化するやり方である。

 その結果、「ご想像通り、後者の方がはるかに効果があることが分かった」(山下副知事)という。こうしたことから、ITを活用したサービスにおいては、利用者が「達成感や楽しさを感じられることが、ものすごく大事なのではないか」と山下副知事は問題提起した。

京都府の山下晃正副知事(写真:水野浩志)
京都府の山下晃正副知事(写真:水野浩志)
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 達成感や楽しさを重視したテクノロジーの導入は、日経BP 総合研究所の髙橋が創案した「空間×ヘルスケア 2030」の中でも想定されている。未来の住宅「Beyond Home」の提案では、階段室の壁全体に雄大な自然の景色を映し出すようになっている。これにより、階段の上り下りを、健康増進のための運動として楽しみながら行えるというわけだ。

 一方、人が能動的にテクノロジーに接するだけでなく、「日常生活の中で特段に意識しなくても、健康に資するようなテクノロジーの活用」(髙橋)も未来の住宅では実現するだろう。例えばトイレでは、尿や便などから様々な成分を自動的に取得し、そこに含まれる貴重な情報を検証。日々の健康状態を管理してくれる。手すりにつかまれば、それだけで体温や脈拍、血圧などを測定してくれる。――そんなイメージだ。

日経BP 総合研究所 戦略企画部長の髙橋博樹(写真:水野浩志)
日経BP 総合研究所 戦略企画部長の髙橋博樹(写真:水野浩志)
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