[東京都]都庁の機能や行政サービスをリアルからバーチャル空間へと分散

 東京都副知事の宮坂学氏は、「東京のスマートシティ戦略について」と題して講演し、その中で東京都が目指す「スマート東京」の将来像とその実現に向けて乗り越えるべき課題を説明した。

 宮坂副知事は、スマート東京の柱として3つのキーフレーズを示した。(1)「電波の道」で「つながる東京」(TOKYO Data Highway)、(2)公共施設や都民サービスのデジタルシフト(街のDX)、(3)行政のデジタルシフト(行政のDX)である。

東京都の宮坂学副知事の講演の様子。投影資料は、「スマート東京」の3本柱(講演のオンライン画面より)
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 「電波の道」とは都が保有する建物などの資産を民間企業に開放し、5Gアンテナ基地局の設置を促すなど産業分野での活用や災害時の通信機能の確保に役立てる施策だ。東京都庁のある西新宿エリアで先行プロジェクトが実施されている。

 公共施設や都民サービスのデジタルシフトは、オンライン教育、オンライン診療、テレワーク、スマートモビリティなどのデータ共有と活用の仕組みに基づく行政サービスの質向上を指す。

 「行政のデジタルシフトについては、東京デジタルファースト条例が都議会で成立し、今後、行政手続きはすべてデジタルで処理することが原則になった。先行して約98%を占める169件の手続きのデジタル化に着手する」と述べた。

 かつてヤフーの代表取締役社長などを歴任した宮坂副知事は、情報の作成(デジタイゼーション)、流通・共有(デジタライゼーション)、情報の利活用による社会そのものの変革(DX)という3段階でいうと、都政はまだ2段階目の手前に留まると指摘した。

 「紙やはんこをベースにしたアナログ環境からオンライン・デジタル環境へ転換する5つのレス徹底推進プロジェクトなど、7つのコア・プロジェクトで都庁の構造改革を進めている。重要なのは、期限や数値目標にコミットしたこと。かつて都庁は有楽町から西新宿に丸ごと移転したが、これからの時代は行政サービスをリアルからバーチャル空間に分散する方針だ」(宮坂副知事)

 宮坂副知事は、行政のデジタル化を含むスマートシティへのチャンレンジを進める上で2つの条件を挙げた。

 まず、DX推進に必要な人材確保。国へ要望しているのが”自治体版”の官民交流制度だ。「日本は世界のメガシティと比べて職員数に占めるICT部門職員数が少ない。官民交流制度は、民間企業に在籍したまま省庁などの仕事を担うことができる制度であるが、地方公共団体にはこれに相当する制度が現状なく、企業を辞める、または企業が人件費を負担する研修生という扱いなどになる。こうなるとリーダー級のすぐれたスキルを有するデジタル人材が集まらない。制度を見直していただくよう働きかけをしている」(宮坂副知事)

 そして、国と広域自治体、基礎自治体が横断的につながる情報ネットワークの構築である。

 「東京都では5Gの取り組みをはじめ、オープンデータやプログラムのオープンソース化、そして失敗や成功の知見を含めたナレッジのオープン化に取り組んでいる。自治体間の分かち合いによって、どの地域の市民も課題解決や協働に参画しやすくなる。すべての自治体のチャレンジが成功する確率が飛躍的に高まると考えている」と宮坂副知事は述べ、連携を呼び掛けた。

東京都が構造改革を進める上で掲げる7つのコア・プロジェクト(東京都の講演資料より)
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