[更別村(北海道)]「じいちゃん、ばあちゃんのQOL日本一の村」へ

 北海道の更別村は、人口約3200人。人口の4割を農業従事者が占める。「農家一戸当たりの高地面積は約57ヘクタール、東京ドームの広さの10倍程度に達し、トラクターの保有台数は農家一戸当たり6.7台だ。とはいえ家族経営が中心であるため、大規模な農業を維持するにはさらなる先進技術の導入などスマート農業化が欠かせない」(西山猛村長)。

更別村の西山猛村長の講演の様子。投影資料は世界トップレベルの農業王国を目指す同村のプロジェクト概要(講演のオンライン画像より)
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 2016年8月の台風10号による大雨は、更別村も含む十勝川水系河川の氾濫や一帯の耕作地が浸水する大規模な被害をもたらした。

 「1カ月以上水が引かない地域もあるなど粗生産額にして約20億円の損害を被った。根腐れ予防の農薬を散布するドローンや、ジャガイモの収穫を短期に行うロボティクスの活用などができれば被害はもっと抑えられたかもしれない。こうした経験から先進技術の利用に伴う規制の緩和や国家戦略特区の指定を目指して国に働きかけてきた」(西山村長)

 技術実装できる大学・企業との連携も拡げてきた。西山村長が特に強調したのは2017年4月、同村に開校した「十勝さらべつ熱中小学校」だ。熱中小学校(関連記事)は、 廃校になった小学校を利活用して大人の学び舎とする全国的な取り組みで、 同村の熱中小学校もその1つだ。2020年7月時点で全国15校、海外1校があり、講師の派遣や情報交換の輪を広げている。

 「同校に村の高校生や社会人、高齢者が集い、IT企業を含む多様な領域の専門家との交流が生まれた。東京大学や北海道大学、帯広畜産大学はじめ、大手の通信事業者、メーカーともつながりができた」(西山村長)

 同校では2018年度からは小麦育種プロジェクト、日本政策金融公庫との包括業務提携に基づく「十勝さらべつ熱中創業塾」、プログラミング・ICTクラブ活動、2019年度からは、ドローンやロボットトラクターをスマート農業に活用する近未来技術実証研究などを進めている。

 「我々が目指すのは、『じいちゃん、ばあちゃんのQOL(生活の質)日本一の村』だ。労働の負荷軽減や生活の足の確保といった課題を様々な高度技術で解決しながら、所得の向上を図る。次の世代を担う孫たちの未来に何を残すか、残せるかを話し合いながら持続可能な豊かな村にしたい。先端技術を実装できる多くの企業とさらに連携していきたい」と西村氏は抱負を語った。