大胆な規制改革とデジタル活用によって暮らしやすい未来都市づくりを目指す、いわゆる「スーパーシティ」に向けて、どのような規制緩和が必要で、自治体はどう取り組んでいくべきか――。日経BPが2021年10月に開催した「デジタル立国ニッポン戦略会議」において、デジタル地方創生に首長や参謀役として関わる4人が討論した。

 4人とは石川県加賀市の宮元陸市長、静岡県浜松市の鈴木康友市長、群馬県前橋市のスーパーシティ構想でアーキテクトを務める日本通信の福田尚久社長、デロイト トーマツの香野剛パートナー/Government & Public Services インダストリーリーダーだ。司会は日経BP総合研究所の小林暢子コンサルティングユニット長主席研究員が務めた。

 加賀市、浜松市、前橋市はいずれも2021年4月に「スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する公募」に応募している。スーパーシティ構想を推進する内閣府の公募に手を挙げた格好だ。最終的に応募した自治体は31に上った。

 しかし同年8月、内閣府の国家戦略特区ワーキンググループは応募した全31自治体に再提案を求めることを決めた。全ての提案が却下された形である。この経緯について、パネル討論を務めた小林氏が「より大胆な規制緩和を提案してほしいということから再提案を求められたが、規制緩和についてどう考えているか」と登壇者に尋ねた。

 日本通信の福田社長は「4月に提案した内容は、多くの人が関わったため、お互いを立てて少し遠慮したものになったと感じていた。審査された方から、その点を見透かされたように感じた」と語った。

群馬県前橋市のスーパーシティ構想でアーキテクトを務める日本通信の福田尚久社長
群馬県前橋市のスーパーシティ構想でアーキテクトを務める日本通信の福田尚久社長
(写真:村田 和聡)
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 前橋市は再提案をまとめているといい、福田社長は「提案に向けて議論した内容は、どれ1つを取っても、岩盤規制をたたくようなものになっている」と自信を見せる。「日本の賃金の低さを改善するために解雇ルールをつくろうということや、小中学校を全て16人学級にすること、前橋市でキャリアに割り当てたが使われていない周波数を行政として使うことなどを検討した」(福田社長)。

「岩盤」規制が共助型サービスの壁に

 浜松市の鈴木市長は「規制改革はそれ自体が目的化しては駄目だ。なぜスーパーシティに取り組むかと言えば、市民生活の質と都市の生産性を向上させるためだ」と指摘した。

静岡県浜松市の鈴木康友市長
静岡県浜松市の鈴木康友市長
(写真:村田 和聡)
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 地域コミュニティーについて鈴木市長は「人口減少と高齢化により、どんどん壊れてしまっている」とし、「地方コミュニティーをサステナブル(持続可能)にすることは全国の地方都市の共通課題だ」と続けた。

 そのためには「共助型の社会システムをつくることと、先端技術の活用しかない」(鈴木市長)。一例として、浜松市が官民連携で作ったフードデリバリープラットフォーム「Foodelix(フーデリックス)」を利用した高齢者の買い物支援の取り組みを紹介した。

 Foodelixの仕組み上は、高齢者の買い物支援が十分に可能で、「地元の方が参加しているNPO法人も協力を申し出てくれた」(鈴木市長)。

 だが実際に買い物支援をしようとすると、「貨物自動車運送事業法など様々な規制でがんじがらめだった。全ての配達者への事業者登録や、車に(貨物運送用の)緑ナンバーを付けることなどが求められた」(同)。そのため、「今回の提案には共助型のサービスを阻む規制緩和についての内容を多く盛り込んだ。これが実現すれば地方は一気に変わる」(同)とした。

 加賀市の宮元市長はスーパーシティ構想について、「当初はミニ独立政府的な触れ込みだった。地方に強力な権限を与えて、大胆な規制緩和をして、という内容で、我々弱小な自治体からすれば非常に胸が躍るような内容だったので応募を決めた」と語った。

石川県加賀市の宮元陸市長
石川県加賀市の宮元陸市長
(写真:村田 和聡)
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 その上で、「大胆な規制緩和は本来地方が求めているもの。今回大胆な提案がないということで仕切り直しになったが、当初の流れから内容が少しずつ変わっていると感じる」(宮元市長)。様々な条件がある中で、人や予算のリソースを集中的に投入して課題に取り組んできた「30あまりの自治体の努力を評価してほしい」(同)と訴えた。

 再提案の内容について宮元市長は「加賀市はマイナンバーカードの交付率が一番なので、その利活用の深掘りを考えている。通信インフラについても新たな提案を考えている」と語り、「岩盤規制について申し上げたいことは山のようにあるが、強力な政治主導でやらないと変えられない。国の方ともスクラムを組んで、切り開いていきたい」と続けた。

 デロイトの香野氏は「4月時点の提案では、多くの自治体がスーパーシティを実現するためのサービスは何かを考え、それを実現するためにはどんな規制緩和が必要なのかを考えたのではないか」と指摘した。再提案で求められている内容として、「そもそもどういうスーパーシティをつくりたいかという1つ手前に戻り、それを実現するための規制緩和の提案が求められているのだと考えている」(香野氏)とした。

デロイト トーマツの香野剛パートナー/Government & Public Services インダストリーリーダー
デロイト トーマツの香野剛パートナー/Government & Public Services インダストリーリーダー
(写真:村田 和聡)
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