「稼ぐ施設」で持続的な公共サービスを

――図書館という施設は、どの都市でもそれなりに大きな集客力を持っている公共施設ですよね。

 大事なのは、どこにでもあるような図書館ではだめだ、ということです。従来のような図書館には、用事がある人しか来ません。それでは周りに投資なんて絶対に起きないわけですよ。駅前にそんな施設をつくっても衰退するだけです。だから私は「紫波町の責任で人が来る図書館を企画してくれ」と町に要望しました。

 そもそもオガールプロジェクトは何のためにやっているのかというと、「雇用と産業をきちんとつくりましょう」ということなんです。しかも従来のような工業団地をつくって企業を誘致して雇用を生もうという発想じゃなくて、都市生活者の方々のために都市的な暮らしを提供することで雇用を生んでいきましょう、と。要は、ここに住んでよかったと思えるような街をつくって、そこで雇用を生んでいきましょうという発想です。

 だから図書館もビジネス支援というコンセプトを持っています。紫波町のビジネスは何かといえば、農業です。人口の25%くらいが農家なので、農業がもっと元気になれば紫波町は元気になります。紫波の図書館はレファレンス機能の充実と、あと蔵書については農業というカテゴリーをすごく多くしていて、ここで農家をやりたい、農業を営みたいという人に対して積極的にビジネス支援をしていくという方針を打ち出しています。

――ビジネス支援に加えて、図書館ではBGMを流したり、飲料を持ち込めるゾーンを設けたりと親しみやすい雰囲気を演出しています。キッチンスタジオや音楽スタジオもあって、いわゆる「本好きの人」だけを意識した施設ではないことが感じ取れます。

 スタジオなどを備える地域交流センターと図書館を一体化して「情報交流館」として運営しています。ここでは「サタスト」というイベントが毎週土曜日の夕方に行われていて、地元バンドのライブハウスと化してますよ。

 オガールプラザという建物の主たるコンテンツは図書館なんです。こうして図書館にいろんな人が集まって、そのことがテナントの利益につながって、そして我々にきちんとテナント料が入ることで、地代と固定資産税が紫波町に支払われるという循環ができてくるわけです。

上空から見たオガールプロジェクトのエリア一帯(写真:紫波町提供の写真を一部加工)
毎週土曜日に情報交流館で開催されている「サタスト!」の様子。サタストとはサタデー・ストリートライブの略(写真:紫波町)
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 そもそも図書館というのは、非採算で、しかも維持費の高い公共事業です。だから町の財政が危うくなったときには真っ先に閉鎖が検討される。だからこそ、「稼ぐ」という発想を持って取り組まなくてはいけないんです。

――人口が減り、自治体の財政も厳しい。そうした中で住民ニーズの高い図書館をどうやって持続的に運営していくか。紫波町に限らず重要な問題です。

 従来の自治体が考える箱物の再整理は、2種類しか選択肢がありませんでした。「つぶす」と「合わせる」の2つです。要するにリストラです。民間からは、この2つに加えて「稼ぐ」という発想が出てくるんです。そうすることによって、持続的に低コストで図書館サービスを提供できるようになります。