コストを削ってもダサくしたらダメ

デザインガイドラインの表紙。監修した紫波町オガール・デザイン会議には、清水義次氏(アフタヌーンソサエティ)、佐藤直樹氏(アジ―ル)、竹内昌義氏(みかんぐみ)、長谷川浩己(オンサイト計画設計事務所)、松永安光氏(近代建築研究所)といった、まちづくりやランドスケープ、建築、デザインの第一人者が名を連ねる(資料:紫波町)
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――だからこそ、民間の商業施設部分にはシビアな事業計画が求められるわけですね。

 「絶対家賃」と我々は呼んでいるんですが、オガールプラザに入居する9テナントが払ってくれる賃料は、誰が何と言おうと変えられない数字なんです。一方で、出資してくれる民間都市開発推進機構(MINTO機構)からは10年以内に配当を出せという条件が、融資してくれる東北銀行からは10年間で返済を完了するという条件が出たわけです。この絶対家賃をベースにして、金融機関のこの厳しい条件をクリアして稼ぐためにはどうすればいいか。答えは一つで、投資額を下げるしかない。

 オガールプラザを木造にしたのも、コストが安く償却期間も圧縮できる木造建築でなければ、10年以内に配当を出すことができなかったからです。木の雰囲気を生かした意匠や環境配慮といったことは目的ではありませんでした。

 一言で言うと面倒くさい仕事です。今までまちづくりの世界では、面倒くさいからみんな補助金を取りに行っていたわけですよ。でも我々は決めたんです。補助金をもらった結果として事業計画が甘くなり、地方にとって過大なものをつくってしまうようなことはやめよう、と。

 過大なものをつくって空き家だらけのビルになってしまったら、新たな投資は呼び込めません。誰しも空き家ばかりの街に家を建てて住みたいと思いませんよね。それと一緒です。

――コストは削りましたが、デザインは重視しています。

 一番の訴求ポイントはデザインです。まず最初に専門家を呼んで「紫波町オガール・デザイン会議」をつくり、オガール地区のデザインガイドラインを定めました。紫波町を中心とした半径30km内には、60万人の人が住んでいます。この都市圏の中で「やっぱりあそこに行ってみたいよね」と思われるような場所をつくらなくてはいけない。ダサいところには人は集まってこないし、住みたいとも思ってくれません。

――そういえば、情報交流館には、会議室(スタジオ)があったり、いろいろな講座が開かれていたりと、いわゆる「公民館」的な機能もあると思いますが、空間のイメージは公民館とは全然違います。

 情報交流館には音楽スタジオがあって、そこに軽音楽部が夕方から来て練習をしたりとか、真っ昼間はおやじバンドが来てエレキギターをガンガン鳴らしたりとかしています。そういうことは公民館では起こらないでしょう? いろいろな人が集まってくるのは、ダサいものをつくらなかったからですよ。

――まちづくりにおいて、「ダサいのはダメ」という指摘は重要な論点の一つかもしれません。今日はありがとうございました。

岡崎 正信(おかざき・まさのぶ)
オガールプラザ代表取締役/オガールベース代表取締役
1972年岩手県生まれ。1995年、地域振興整備公団(現・都市再生機構)に入団し、2002年に退団するまでの間、東京本部、建設省都市局都市政策課、北海道支部などで地域再生業務に従事。その後、オガール紫波取締役などを経て現職。理事をつとめる一般社団法人公民連携事業機構では、東北芸術工科大学と共同で7月に「公民連携プロフェッショナルスクール」を開校。人材育成の取り組みを開始予定。