東京・渋谷の秋の風物詩となったハロウィン。若者が思い思いの仮装やコスプレで街に集結する

今や東京・渋谷の秋の風物詩となったハロウィン。若者が思い思いの仮装やコスプレで街に集結する。海外でも、ニューヨークのようにハロウィンの仮装パレードで盛り上がる都市はあるが、シブヤではコスプレ文化がミックスして独自の進化を遂げた。まさに“観る”より“する”文化の体現である。(写真=2017年10月31日、ハロウィン本番に仮装した人たちで混雑する東京・渋谷駅前 共同通信社)

“観る”より“する”東京発のライフスタイル提案を

──東京は発展したけれど、かつての良いものを否定したり、壊したりもしてきました。それではこれからの100年、より魅力的で活力ある都市にするには、どうすればいいのでしょう。

為末 先ほど、スポーツ選手育成の「ホットスポット化」という話をさせていただきましたが、もう一つ別のトレンドとして、スポーツの“コンパクト化”があります。サッカーがフットサルになり、バスケットが3人制になり、バレーがビーチバレーになる。少人数かつ短時間でプレーする。それはおそらく、都市化の進展と無関係ではないと思います。この種のスポーツの集積地のようなものを、東京につくることを考えてみてもよいのではないでしょうか。

 ただし、これはあくまで“プレーするスポーツ”の話です。“観戦するスポーツ”は、従来通りの伝統的なスタイルが残っていくと思います。つまり“する”と“観る”とが分離しつつあるんです。

田中 為末さんのお話を聞いていて感じたのですが、日本人は“観る”より“する”が好きなんだと思います。例えば、江戸時代に歌舞伎が流行すると、そのうち役者の物まねが流行り始めて、「鸚鵡石(おうむせき)」という物まねのための本が出版されます。また、小唄の前身の端唄というのは、長唄を短くして素人でもできるように工夫したものです。

 つまり“観る”だけでは満足できず、“する”を創り出している。そういう面白さは、外国にもどんどん伝わっていますよね。アニメを中心としたコスプレやカラオケは世界に広がっている。東京は、そういうものを先導していく拠点になる可能性があると思います。

涌井 先進国、とりわけ日本のような立ち位置にある国というのは、これからどうやって産業を引っ張るのかというと、多分、才能で引っ張る以外にないと私は思っているんです。つまり感性価値。日本から新たなライフスタイルを世界に対して提案する、ということです。

 それはソフトだけに限った話ではありません。私は首都高速の大橋ジャンクションの環境プランニングに関わりましたが、ここの屋上部分に緑があふれる公園を整備しました。普通、高さ35mの巨大なジャンクションが隣にあったら、マンションは値段が下がりますよね。ところがここでは値段が上がっています。しかもあんな高さに緑の庭園があるというので、はとバスが訪れる名所にまでなりました。

 これまでのインフラは、基本的に縦割りで、道路は道路、河川は河川、鉄道は鉄道の役割しか考えてきませんでした。しかしその役割を複合的に捉えることで、新たなライフスタイルを感じさせる空間を生み出せるんです。

 交通機関も、人や物を運ぶだけでなく、今ではコトを提供する場に変わっています。エキナカがいい例です。魅力的な商業空間が、駅の構内にどんどん生まれています。情報の拠点にもなっています。

代々木公園留置線(地下鉄千代田線の車両を留置する側線)の工事の様子
代々木公園。都民が憩う公園と、地下鉄車両を一時的に留め置く側線

左の写真は、代々木公園留置線(地下鉄千代田線の車両を留置する側線)の工事の様子。1969年に撮影されたものだ。右は代々木公園。都民が憩う公園と、地下鉄車両を一時的に留め置く側線──。まったく異なる機能が結びつき、環境に配慮した合理的なインフラ複合化を実現した先駆事例だ
(写真左=東京メトロ、右=日経BP総研)

上空から見た大橋ジャンクション
目黒区の小学生による稲作体験の様子

左の写真は上空から見た大橋ジャンクション。首都高速道路3号渋谷線と山手トンネルを結ぶ4層ループ構造のジャンクションの屋上には、公園や広場などが設けられている。ジャンクション内に建つ大橋換気所の屋上に整備した「おおはし里の杜」には水田も。右の写真は地元・目黒区の小学生による稲作体験の様子
(写真=首都高速道路)

山村 その通りだと思います。地下鉄は人を運ぶだけではなく、東京の魅力を伝える案内役でもあります。また、これからの100年を考えれば、人と人がよりつながりを求めていく時代になっていくでしょう。地下鉄というインフラが、つながりやコミュニティを生み出したり、ストレスを緩和したりする空間になるように、上手に複合化をしていきたいですね。

 既に実現した事例では、駅構内でクラシックコンサートを開いたり、早朝英会話教室を開催したりしています。それから、地下鉄の構内は狭い空間ですが、駅によっては多くのビルや施設につながっています。近隣のビルに癒やしの空間のような場所があって、そこと連携することで、さまざまな場を生み出せると思います。大手町駅などは、それに近いイメージに変わりつつあるのではないでしょうか。