夜でも街中を歩いていられる治安の良さ。都市に求められる重要な要件の一つである。安心・安全に関しては、東京は世界の数々の大都市の中でも折り紙付き。1964年の東京五輪を契機に、セコムは民間の立場で、防犯、防災、医療、介護から生活支援の領域まで、住民に安心を与える仕組み・サービスを整えてきた。

東京オリンピック'64の警備を請け負い、「民間企業による警備」というサービスの認知度が一気に高まった 東京オリンピック'64の警備を請け負い、「民間企業による警備」というサービスの認知度が一気に高まった

東京オリンピック'64の警備を請け負い、「民間企業による警備」というサービスの認知度が一気に高まった

 一括りに安心・安全といっても、いくつかの観点がある。分かりやすいのは犯罪件数の少なさだろう。人が集まるからこそ事故や犯罪の件数は増える。そんな中でも平穏に暮らせる、あるいは安心して訪れられる都市にするには、安心・安全を高め、維持する基盤が不可欠である。

 もちろん、治安の良さを誇る背景には警察組織の努力や、日本人の気質などが影響しているが、それ以外に防犯のための仕組み、つまり防犯システムが整っていることが挙げられる。銀行などの人が集まる場所、企業、そして家庭にセンサーや監視カメラを設置し、異常がないかどうかを監視する。異常発生時には、監視センターに通報が行き、警備員が現場に急行する。こうした仕組みによって、犯罪抑止の効果を期待できる。

64年の東京五輪を契機に浸透

 こうした安全・安心のための基盤として防犯システムを普及させた草分け的な存在が、警備会社のセコムである。防犯システムにはじまり、医療、地理情報サービスなど、人々の安心と安全のための事業を手掛けている。

 1962年に創業してから、警備サービスを提供しようと、あちらこちらの企業を訪れ、そのサービスの意義を訴えた。ただ当時は、欧米にこそ同種のサービスはあったものの、国内ではその重要性が認知されておらず、業績はなかなか伸びなかった。

 そんな同社が一躍世に名を馳せるきっかけとなったのが、1964年に開催された東京オリンピックである。その少し前から徐々に企業に受け入れられ始めていたところへ、オリンピック選手村の警備を請け負い、「ガードマン」というサービスが認知されたことで、一気に需要が拡大した。

 一方で、人手のみによる警備では成長に限界があることにも気付いた。「需要は確実に拡大する。ただ、同じやり方では人員はいくらいても足りない。そこに膨大な人員を充てることは社会にとってよくない」。こうした考えに基づいて同社が打ち出したのが、オンラインで契約先の状態を遠隔監視し、異常発生時には警備員が現場に急行する「オンライン・セキュリティシステム」である。現在の同社サービスの原型と言っていいだろう。

 このプラットフォームをベースに、次に手掛けたのが、一般家庭向けのホームセキュリティサービスである。家庭向けよりも企業向けの警備サービスが先だったのは、緊急対処拠点とICTインフラを整備する必要があったためである。これを家庭向けだけで提供するとなると、サービス料金が高くなってしまう。そこで企業向けを先行させてインフラを整備した。

さまざまなテクノロジーを活用して、セコムは、防犯、防災、医療、介護から生活支援の領域までサービスを手掛けている さまざまなテクノロジーを活用して、セコムは、防犯、防災、医療、介護から生活支援の領域までサービスを手掛けている

さまざまなテクノロジーを活用して、セコムは、防犯、防災、医療、介護から生活支援の領域までサービスを手掛けている。そのほとんどの事業の構想は、「社会システム産業」という理念の下、創業当時に考案されたものだという

いつでも、だれでも、切れ目なく

 我々の社会生活の安心・安全を高めるという考え方に基づくと、オンライン・セキュリティシステムや入退室管理、監視カメラ、ホームセキュリティといった防犯関連以外にも、各生活シーンの不安を取り除くための仕組み/サービスが必要になる。

 セコムもこうした考えに基づく「社会システム産業」という理念を掲げ、さまざまなサービスを展開してきた。サービスの開始時期こそ段階的だが、「実はそのほとんどの事業の構想は、創業当時に考案されたもの」(小松崎常夫・顧問)。目指しているのは「いつでも、どこでも、安心」「誰にとっても安心」「切れ目なく、ずっと安心」な社会である。同社にとって東京は、そうしたスマートリビングを最初に実践していく、“安心・安全のショーケース”といえる。

 例えば防災に関連したものでは、人々に安心を与えるための災害予測、災害を未然に防ぐためのインフラ点検、災害発生時の安否確認や避難支援といったサービスは既にある。人々の体調面の安心・安全に向けては医療サービスがあるし、医師がいない、あるいは少ない地域向けとして遠隔画像診断など医師自身を支援する仕組みもある。

 深刻さを増す高齢化への対策の観点からは介護サービスのほか、食事を支援するロボット「マイスプーン」を提供するサービスがある。さらに日常的なちょっとした安心、あるいは不安解消まで考えれば生活支援も視野に入る。