銀座6丁目、銀座の中央通り沿いに2017年4月オープンした話題の大型複合商業施設「GINZA SIX」。オープンから4カ月の推移は計画を上回り出足好調だ。この施設は、東京の華ともいえる街、銀座をどう変えるのか。かつて全盛を誇った「百貨店」の新しい姿を提示できるのか。その戦略を読み解く。

商業施設のインテリアは、キュリオシティのグエナエル・ニコラ氏がデザイン

商業施設のインテリアは、キュリオシティのグエナエル・ニコラ氏がデザイン。天井に向かって「らせん」のようにぐるぐると回り、「GINZA SIX」のエネルギーを発信しているイメージにした。天井には日本人アーティストの草間彌生氏による巨大な「南瓜」が期間限定で展示されている

正面のファサードは1階の路面に出店するテナントに依頼し、細長いビルが立ち並ぶファサードをデザインしてもらったという

正面のファサードは1階の路面に出店するテナントに依頼し、細長いビルが立ち並ぶファサードをデザインしてもらったという

 「季節物の商品の立ち上がりが、他の施設に比べて圧倒的に早い。新しいもの好きの多い土地柄なのだということが、ちょっとした顧客の購買行動からもはっきりと分かる街だ」。森ビルの栗原弘一・GINZA SIXリテールマネジメント取締役・森ビル執行役員 営業本部商業施設事業部統括部長は、銀座の街の特徴をこう表現する。

 GINZA SIX(ギンザシックス)は、森ビルとJ.フロント リテイリング、LVMHグループのL キャタルトン リアルエステート、住友商事の4社で運営を手がける施設。銀座という東京の中でもブランド力の特に高い立地を生かした、「ラグジュアリー」な商業施設を擁する複合施設だ。

 経済と人の流れのグローバル化が進む現在、世界各国の都市間競争も熾烈(しれつ)になってきている。東京のライバルは、国内の他の都市ではなく、北京や香港、シンガポールといった近隣のアジア諸国の都市。海外の企業が投資したいと思うのか、国外からの旅行者が訪れたいと思うのか。国の浮沈は、まさに都市の力にかかっている。

大型開発がなかった銀座

 そうした中で森ビルはこれまでも、六本木ヒルズや表参道ヒルズなどの再開発を行い、「ライバルの都市に対抗するために何が必要かを常に考え、まちづくりや大型再開発を通じて東京の都市力を高めてきた」(栗原氏)。

 バラバラな地権者をまとめて容積率を高め、その地域の土地の力を高める。そして、再開発を行う地域の文化や遺産を守りながら、新しい文化を注入してオフィスや文化施設、ショッピングセンターやレストラン、住宅などの複合施設を生み出してきた。そのまちづくりの経験が、今回は銀座で生かされている。

 現在、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、大手町や八重洲、日本橋、そして渋谷などで大型再開発が相次いでいる。一方でこれまで銀座は、ほとんど大型の再開発が行われていなかった。

 銀座はもともと、600~800%と高い容積率を活用して土地の高度利用が行われてきた地域。地権者は、それほど広くない土地にもペンシル型のビルを建てられるため、十分な土地運用が行えていた。だから大規模開発をする必要を地権者が感じなかった。

 こうした銀座独自のまちづくりのルールや仕組みが、さまざまな「のれん」が所狭しと立ち並び、大通りから細い路地まである、独特の街並みを支えてきたのだ。

 そうした中で行った「最初で最後になるかもしれない」という大規模開発が、GINZA SIXである。旧松坂屋跡地に加え、道路を挟んだ隣の区画の土地を地権者約15人と協議して取りまとめ、さらに公共空間を整備。結果的に1360%の容積率を実現させ、オフィスと商空間、そして能楽堂などの文化施設が同居する複合商業施設を生み出したのだ。

 だが、こうした大型施設は、ともすれば街が持っていた魅力を損なってしまう危険も伴う。いかに銀座らしさを引き出すかがポイントになる。

パーツを入れ替えることで、GINZA SIXの完成前と完成後の銀座の街並みが比較できる模型を作製 パーツを入れ替えることで、GINZA SIXの完成前と完成後の銀座の街並みが比較できる模型を作製

パーツを入れ替えることで、GINZA SIXの完成前と完成後の銀座の街並みが比較できる模型を作製

 GINZA SIXではそのために、建築デザインやテナント戦略などコンテンツ作りにさまざまな工夫を凝らしている。

 建物のデザインを見てみよう。目抜通りの中央通りに面した上層階は、切れ目なく水平に流れる間口115メートルの「ひさし」で建物のスケール感を強調。一方で銀座らしい街並みを壊さないため、4階までの低層階には、6つのラグジュアリーブランドに複数階にわたって店舗を構えてもらい、各ブランド独自の「のれん」を掛けてもらう。このことで、銀座らしさを損なわない、縦割りの街並みを表現したのだ。

 そして、商業施設のテナントをはじめとするコンテンツは「伝統と革新」をテーマにつくり上げた。例えば中央通りの6ブランドは、クリスチャン・ディオールなど、銀座らしい伝統を感じさせるグローバルなイメージを持つ店舗を誘致。一方で、例えばディオールには国内初となるカフェを併設してもらった。その他にも時計メーカーのフランクミュラーがスイーツを提供するなど、ラグジュアリーブランドにも「想定外の試みを求めた」(栗原氏)。

 高級ブランドは必ず、まず最初に銀座に店を構える。高級ブランドだけではない。マクドナルドやスターバックス、アップルも、日本で初めて店を構えたのは銀座だった。新しいものは必ず銀座が発信地となり、だからこそ人々は銀座に惹きつけられる。その革新性をGINZA SIXでも求めたのだ。