ヘルスケア領域で進む、クロスリアリティ

 共感覚のように、遠隔でのコミュニケーションを行う「狭義のテレパシー」機能がヒトにはビルトインされているのかもしれない。しかし、こうしたクオリア(感覚質)の議論に立ち入らずとも、「広義のテレパシー」は現在進行形で社会実装されていると視ることができる。

 拡張現実(AR;Augmented Reality)・仮想現実(VR;Virtual Reality)・複合現実(MR;Mixed Reality)・代替現実(SR;Substitutional Reality)。それぞれの概念分割が困難であり、現在では総称してクロスリアリティ(xR;Cross Reality)と呼ぶことも多い。現実世界を別の手段で表象する技術手段の進化が著しく、技術立脚型の企業やアカデミアによって、ヘルスケアの領域においてもその利活用に向けた実証研究や開発が進められている(図2)。

図2●クロスリアリティ
ハードウエアや各種技術を組み合わせて、多様な「クロスリアリティ」を創出するプレーヤーが登場(出所:DOI:10.3109/17518423.2012.740508、DOI:10.3109/17518423.2012.713401、 Crunchbase Inc.、各社ウェブサイト、各種二次情報を基に筆者が作成)

 単体のアルゴリズムやソフトウエアの展開のみならず、ヘッドマウントディスプレイ(HMD;Head Mounted Display)などのハードウエアを絡めたクロスリアリティの社会実装が進む。

 例えば、CYBERDYNEは2018年、「Cyin福祉用」の販売を開始している。人が動作意思を発揮した際に脳から筋肉へ送られる微弱な生体電位信号をインプットとして読み取り外部デバイスへアウトプットすることで、発話や身体動作が困難な難病患者の方々のコミュニケーションや活動を支援するデバイスだ。

 当該デバイスは、神経・筋難病疾患に対する医療機器として承認されている「HAL」の技術基盤に立脚している。具体的には、研究開発を通じて得られた生体電位信号に関するセンシングやデータ解析アルゴリズムのノウハウに基づいた製品となっている。