昨今議論が勃興する“遠隔技術群”も同等の便益をもたらす

 ロボティクスを絡めたクロスリアリティの社会実装も進展中だ。スタートアップ企業のオリィ研究所は、対孤独用分身コミュニケーションロボット「OriHime」のシリーズを開発している。2018年11月26日から12月7日までの期間限定でオープンした「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者や脊椎損傷者などの重度障害者10人を店員(「パイロット」)として採用、自宅から分身ロボットを用いたテレワークによる接客を実施した。

「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」を実施した(出所:オリィ研究所)

 同社の製品では、インターネット経由でパソコンやスマートフォンから分身ロボットの操作をすることで、病気や障害を越えた「リアルな」意思疎通が可能となっている。テクノロジーのチカラで、移動、対話、社会参画を実現することができる。難病患者をはじめとして、不登校児、通訳者、見守り、在宅勤務者など、対象となるユーザーの射程は幅広い。

 さらに同社は、福祉クリエイターの澤田智洋氏とコラボレーションをして、「ボディシェアリング」用の忍者型ロボット「NIN_NIN」を開発している。肩に載るほどの小型なロボットと遠隔ネットワークを通じて、視覚障害者の人は歩行障害者の人の視覚的支援を受ける。一方の歩行障害者の人も視覚障害者の人の歩行的支援を受けて、ともに街並みを満喫することができる。

 「tele」は「遠隔」、「pathos」は「感覚与件や内省」を意味する。これら二つの言葉の組み合わせから創られた造語がテレパシーであった。現代におけるテレパシーの実践的意味合いは、「かけ離れた人と人の間の結び付きを強化すること」にある。その意味で、昨今議論が勃興するTelemedicine(遠隔医療)・Telepharmacy(遠隔薬局)・Teletherapy(遠隔セラピー)も社会にとって同等の便益をもたらすものと捉えることができる。

 IoT利活用の目的は人々の間の関係性を強化することにあって、それらを希薄化させることが眼目ではない。そうした視点に立つと、こうした「遠隔」技術群に対する国内の当局や臨床現場の現在の受容の態度には、いささか遅緩な印象を受ける。

(タイトル部のImage:yoshitaka -stock.adobe.com)