Facebookの事業展望

 ひるがえって、これらの“Moonshot”な研究開発や一連のM&Aは、Facebookの事業収益に何をもたらすのか。HMIは、SNSという一つの経済空間において、ユーザー体験の抜本的転換を見込んだ投資とみることができる。ドラッグリポジショニングについては、機能増強に必要なAI研究のテストベッドとして創薬領域を選定したという見方もできる。また、現状断面では全体売上高の10%未満である「Others」セグメントにおける将来の新たな収益ソース獲得のための先取り投資と視ることもできる。

 いずれにせよ、コアとなる技術基盤を獲得した人財やアセットをFacebookという一つのブランドへ統合しているのは特徴的だ。対照的に、InstagramやWhatsAppなどは顧客基盤と付随するサービスや機能の獲得による既存事業とのシナジー創出を達成している(図表3)。

図表3●事業ポートフォリオ
図表3●事業ポートフォリオ
現状の売上高構成(左)とFacebookの投資領域(アンゾフの成長マトリックス)(右)(出所:企業決算資料・企業ウェブサイト等を基に筆者作成)
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 なお、投資をすぐに成功させているわけでもない。2014年のOculusの買収はFacebookがAR市場を牛耳ることを予見させ、2016年の「AR元年」をもたらした。しかし現段階において少なくともヘッドセットとタッチコントローラーについては、ザッカーバーグが期待していたほどの事業貢献をしていない。市場からのフィードバックを踏まえて、2019年にはスタンドアローン型3DoF(three degrees of freedom)のヘッドセットシリーズOculus Goの販売中止、スタンドアローン型6DoFのOculus Questシリーズへの展開を示している。

 (訴訟すら辞さない!)幾度とない失敗から学び、アジャイルにその歩みを変えることを同社は体得している。その速度に産業界はどのように対峙すればよいのか。次のオンライン会議がまたスケジュールされようとしているが、蓋し会議のアクションリストを実践に移すことの方に意味があるのかもしれない。

(タイトル部のImage:yoshitaka -stock.adobe.com)