医療におけるモビリティーの意味合い

 生活者としての患者の生活様式に目配せをすると、医療課題の多くはモビリティーと紐づいていることが分かる(図表2)。

図表2●生活習慣病治療に関するRoot Cause Analysis
Mobilityが根本原因となって、患者の治療成績の低下や、医療現場のオペレーション負荷増大をもたらしている可能性がある(出所:生活習慣病等慢性疾患患者、HCPsへのインタビューを基に筆者作成)

(1)医療アクセスの阻害
移動が原因で医療アクセスが困難な患者層が存在する。運動機能に障がいを抱えている例、僻地に居住するため医療機関へのアクセスが困難な例、(都心であっても)医療機関への簡便な交通手段を有さない例。

(2)最適な医療選択の阻害
現状、一次医療窓口という意味でのホームドクターやかかりつけ医は日本の社会に本格浸透していない。生活者、患者は全国の病院やクリニックなどの医療機関に自由にアクセスすることができるが、医療機関選択は受診者の選択に委ねられており、その選択基準としては医療施設への距離が大きい。逆説的に言えば、受診者の医療機関へのフリーアクセスが原因となって、受診者は個別疾患の最適なケアフローを享受できていない。

(3)治療継続率の悪化
最適な場所(医療機関)において最適なタイミングで最適な医療にアクセスすることができないことにより、通院や治療の継続が困難となり、アドヒアランスやペイシェンスに影響を与える。

(4)治療アウトカムの減損
結果として、日常生活を含むQOLが低下する。重要なことは、これらが患者のQOLや日常生活に影響を与えて、「負のサイクル」をもたらしているということだ。慢性疾患が進行すると、診断や治療に対する物理的ハードルが上がるとともに、心理的モチベーションが低下し、治療継続率が逓減する。日常生活へ負の影響がもたらされて、さらに治療継続率が下がるという悪循環が生まれる。

(5)臨床現場のオペレーション効率の悪化
同時に、非効率なモビリティーは、外来における待ち時間、院内感染症リスク、入院期間の増加、などの付随的影響を臨床現場や医療機関にもたらしている。