猪突猛進と医療提供を通貫したサービス

 構想の初矢から足掛け3年半。同社は、ヘルスケアでの事業活動において、最も活発な企業の一つとしてニュース欄を騒がせている。

 Amazonは、2018年1月、ウォーレン・バフェット率いるBerkshire Hathaway、金融業界の雄JPMorgan Chase & Co.と三社で米国企業向けの新しい健康保険を構築することを発表した。テクノロジーを使って膨大するヘルスケアのコストを抑制するとともに、サービスの質を向上させることを企図したものだった。2年後に当該三社連合は発展的解消を経るが、Amazonにとっては、その後のヘルスケア事業の電光石火の展延の礎となった。

 2018年6月には、処方薬の患者へのオンラインデリバリーを行うスタートアップ企業PillPackの買収を実施した。オンラインの登録から医薬品を受け取るまでシンプルな導線が設計されており、患者は薬局に行く必要がない。更には社名の通り、服薬日時ごとに複数の医薬品が「パック」されていて、服薬アドヒアランスの向上も期待できる。

 2020年11月には、米国におけるAmazon Pharmacyの立ち上げとPillPackのデリバリーサービスをプラグイン(関連記事:Amazon、処方薬のオンライン薬局「Amazon Pharmacy」始動)。PillPackは保険者と製薬企業の価格調整弁となる薬剤給付管理会社(Pharmacy Benefit Manager)の多くと契約をしていた。Amazonは、薬局機能を内製化することで、医療機関から患家へのラストワンマイルをAmazonのEC基盤で繋いだことになる。なお、プライム会員にはブランド医薬品では最大40%、ジェネリック医薬品では最大80%のディスカウントが適応されるなどの価格優遇がある。

 2019年12月には、シアトル限定でローンチしたリアルとバーチャルのハイブリット医療を企図するAmazon Careを設立。2021年からはAmazon以外の企業にもサービス拡大を発表をしている。これによりAmazonは医療施設運営の領域までその事業射程を拡げたことになる(図表3)。

図表3●医療提供体制のカバレッジ拡大
図表3●医療提供体制のカバレッジ拡大
有機的・非有機的に事業ピースを組み合わせて、医療提供体制のカバレッジを拡大しシームレスに繋げようとしている(出所:各種公開情報を基に筆者作成)
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 パンデミックとも関連して、患者や患家へのリーチも拡大する。2021年5月にはCOVID-19の在宅検査診断キット(Amazon Real-Time RT-PCR DTC Test for Detecting SARS-CoV-2)のFDAからの緊急認可を得て、子会社STS Lab Holdcoによる消費者に対する直接販売を開始した。2020年8月にはスマートウォッチではないスマートバンド(画面が無い!)ウェアラブルデバイスのAmazon Haloをリリース(関連記事:Amazon、健康サービス「Amazon Halo」を発表)。スマートフォンのカメラやマイクとも連動し、加速度、温度、心拍数、などのヘルスデータ取得に機能特化したものとなっている。米国では、製品性能そのものに加えて、本体価格100ドルと月4ドルのサブスクリプションサービスとも合わせて、消費者からの受容性を検証する段階にあるようだ。

 流通のジャイアントは空の目配せも怠らず、ドローンを活用した30分以内の個家配送を目指すAmazon Prime Airの実証実験も進めており、2013年以前のジェフ・ベゾスによる構想開始、現在でも社会実装に向けた試行錯誤を続けている。

 AWSもライフサイエンスやヘルスケア産業におけるビジネス拡大に野心的だ。2021年6月にはヘルスケアのスタートアップ企業を支援するアクセラレータであるKidsXと提携してAWS Healthcare Acceleratorを開始。2021年7月にはサイロ化する構造・非構造データをHL7-FHIRあるいはその他データ規格もFHIRに転換するコネクタを備えた、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)準拠のデータレイクサービスとなるAmazon HealthLakeをローンチ。並行して、産業界のパートナー企業とともに「ヘルス」に特化したクラウドビジネスとなる「AWS for Health」をローンチして、産業特化型のバーティカルなクラウドトランスフォーメーションも牽引する。