スポーツを越えて

 さらには、デバイスや技術進展に焦点を当てた競技大会も誕生している。スイス発祥のサイバスロン(CYBATHLON)は、身体に障害を持つ人々が互いに競い合い、最先端の技術支援システムを使用して日常のタスクを完了するユニークな競技大会である。チューリッヒ工科大学においてセンソリモーターシステムを研究するRobert Riener教授は、日常支援システムを開発するためのプラットフォームとなるような場として2013年にサイバスロンを開始した。

 サイバスロンでは、従来型の競技やスポーツの固定観念を越えるような競技種目が現在6種類設定されている(図表1)。

図表1●スポーツの進化
図表1●スポーツの進化
脳科学やバイオ工学の進化に対応した、従来型の競技やスポーツの固定観念を越えた新しい競技体が誕生している(出所:Eidgenössische Technische Hochschule Zürichを基に筆者作成)
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 例えば、Brain-Computer Interface (BCI) Raceにおいては、BCIを装着した競技者が、ゲーム内のアバターを通じて競技を行う。脊髄損傷、脳卒中、神経疾患やトラウマによって四肢の麻痺を有する競技者が参加資格を有する。参加者は、脳波(EEG)や近赤外線分光法(NIRS)を利用してBCIにより自身の脳のシグナルを読み取る。

 2020年のCYBATHLONにおいてはスクリーン越しの自らのアバターを通じて、4人の「走者」が4分以内の順位を競う。当該レースは、BCI技術の精度と安全性を検証する側面もあり、将来的にはアバターだけでなく、BCIによる車椅子の精緻な動作制御を実現することも目的としている。

 Powered Exoskeleton Raceは、脊髄損傷により脚部が完全麻痺している競技者が参加資格を有するレースだ。現在、Powered exoskeletonは、アクチュエーターや人工筋肉などの動力を用いた外骨格型の装置として、理学療法やリハビリテーションにおいて主に用いられている。

 BCI Raceと同様、4人の競技者が日常生活において想定される6つのタスクの達成度合いと達成時間を競う。当該レースは、車椅子に追加した活動補助器具としてのPowered exoskeletonの技術進化を目的としているものだ。

 パラリンピックと比較すると、競技の「記録値」ではなく、「日常生活の支援」に力点が置かれている点、またその課題を解決するための技術の研究開発と実装支援の場となっている点が特徴的だ。