椅子を置いて介助する空間を

 Aさん宅での浴室改修の内容を見てみます。

 まずは脱衣所の環境改善から始まりました。脱衣所のスペースを拡げます。そうはいっても床面積は変えられませんので、大きなサイズのドラム式全自動洗濯機を広い台所に移動させました。これで椅子を置いてAさんが腰掛け、介助者が着脱の介助をする空間を確保できました。

 次に浴室部分の改修です。まずは浴室の片開きドアを折れ戸へと変更します(写真2)。先にも述べましたが、片開きドアでは、ドアの動きに人間が振り回されるからです。折れ戸であれば、開ける時にドアが縦半分に畳まれます。そうすると開閉時に洗い場のスペースをほとんど塞ぎません。開口部も広くなり、介助者と2人で移動するのも楽になります。洗い場にシャワーチェアーが置いてあっても、邪魔になることはありません。

写真2 浴室の片開きドアを折れ戸に変更

 また、浴室の出入口にタテ手すりを付けました。脱衣所側と浴室側に1本ずつ取り付け、移動の際につかまれば、少々の段差があっても身体のバランスを保てます。手すりがあれば、誰かに支えてもらわなくても、もう一方の手で浴室ドアの開閉ができるようになります。Aさんの場合も、介助者が身体を支えなくても、見守り程度のサポートで、脱衣所と浴室間の移動が安定してできるようになっていきました。

 浴室内部も大きく変更しました。まず浴室内のバランス釜を撤去して、屋外に給湯器を取り付けました。バランス釜を撤去した分、今までより少し大きい浴槽を設置できました。さらに浴槽を埋め込み、床のかさ上げも行いましたので、Aさんが浴槽をまたぎやすくなりました(写真3)。

写真3 またぎやすくした浴槽

 かさ上げの理由について、少し説明をします。

 浴槽の縁をまたぐ時、たいていは片足立ちになって、もう一方の脚を引き上げてまたぎます。ただでさえ不安定な動作ですが、このお宅の浴槽では、床から60cmも脚を引き上げないとまたぐことはできません。麻痺がある身体で、片足立ちになって、もう一方の脚を60cmも引き上げるのはとても難しい動作です。しかも危険な動作です。

 浴槽の縁に腰をかけて、麻痺側の脚を自分の手で、または介助者の手で持ち上げて浴槽内に入れたり出したりすることもできます。しかしそれにしても、60cmもの高さ分を持ち上げることは大変です。麻痺している脚、つまり自分で動かせない脚はとても重く、しなやかには動きません。そのようなことから、浴槽を床に埋め込んで、浴槽をまたぐ際に大きな動きを取らなくてもいいように工夫をしました。

写真4 浴槽の出入り用に取り付けたタテ手すり

 それでも片足立ちになると、バランスを崩す恐れがありますので、浴槽の出入り用にタテ手すりを1本取り付けました(写真4)。この手すりは、洗い場でシャワーチェアーからの立ち座りの際にも使えます。さらに浴槽内で身体のバランスを保てるように、ヨコ手すりを1本取り付け、湯に漬かりながらつかまっていられるようにしました。