奥様も歩いてみたいと言い出した

 機械力を利用すればもう少し苦労せず行き来することも可能ですが、かなり大掛かりな工事が必要になることと、あまり自宅に手を入れたくないというご本人の希望や予算にも添えた感はありました。また、リハビリ目的もありましたので、理学療法士や福祉用具相談員など、色々な方からのアドバイスで完成した改修となりました。

 後日談ですが、勝手口から介助歩行でポーチまで歩く旦那さんを見て、奥様も歩いてみようと言い出したそうです。奥様は、玄関から全介助で車いすに移乗して外出していました。

 安全性を考えると、「どこでも車いすでの移動を」と考えがちです。しかし、それではせっかくの「自分の足で歩きたい」という意欲を萎えさせてしまうことになります。今回の事例は、車いす移動の対象者にとって必ずしも必要な改修ではありません。しかし、ご本人の「歩きたい」という希望をかなえることにより、歩行能力を維持し、ひいては向上させることができる改修になったのではないかと思います。

■溝口氏のコメント
 私は建築士として多くの住宅改修事例を経験してきました。建築工事で対応できないことはありませんが、福祉用具を上手く利用すると原状復帰にも簡単に対応できます。工事で対応すべきか、福祉用具で用を足せるか、それぞれのメリット・デメリットを考えて判断します。そのためには、金額の問題、健常者にとって邪魔にならないか、将来的な問題も含めて家族や利用者との相談が欠かせません。

(タイトル部のImage:Ivan Kruk -stock.adobe.com)