今回は、脊髄損傷のために車椅子を使用されている40歳代男性Aさんの住宅の改修事例を紹介します。車椅子でも、住環境を上手に整備することができれば、独居での自立が可能になります。1級建築士である、高齢者住環境研究所の稲垣保さんの報告です。(溝口千恵子)

 Aさんは、マンションで1人暮らしをされています。以前は両親と一緒に暮らしていましたが、今は別々に暮らしています。ご両親はお元気ですが、必ず先に老いるので、息子さんの自立を考えて1人暮らしをさせることを決断されたのでした。

 お住まいは3LDKの一般的な間取りで、15年以上前に車椅子でも生活できるようにトイレと浴室を一つの部屋にまとめる改修を行っています。

 しかし、排水の都合上、入り口に15cmの段差がありました。スロープを設置してありましたが、勾配が急なため、車椅子では勢いをつけて上らなければいけませんでした。ちょっとしたことかもしれませんが、トイレと入浴のたびに、急なスロープを乗り越えなければなりません。この一苦労は、日々の生活を送る上で、Aさんが何とかしたいと思っていた課題の一つでした。

 また台所には、一般的な寸法のキッチンが設置されており、車椅子ではカウンターも高く、手が届かない位置に棚があるなど、使い難い状況でした。それから3室のうち、1室は和室で入り口の床に段差があるため車椅子では乗り越えられず、全く使うことができませんでした。

 ある日、洗面台が経年劣化のため漏水しました。その補修工事をきっかけに、今後も長く住めるようにと全体を改修することになりました。