なぜ厳格なエビデンスが求められるのか

 分野としては、心不全や糖尿病、精神疾患、皮膚科診療、慢性疾患管理、あるいはリハビリテーションといったデジタルヘルス技術が多く使われるようになっている領域が中心であるが、疼痛管理や認知症患者向けのペットロボットなど、あまり一般的とは思われないようなもののシステマティックレビューまであり驚かされる。デジタルヘルス技術は、従来の技術に比べると、技術の利用状況など、データ収集が比較的容易であることが背景にあるとみられる。

 ポジティブな結果のものしか出版されないというバイアスも疑われるが、これまで見たところ、デジタルヘルス技術の有効性が既存技術を上回っているという結果が比較的多い。ほとんどの論文(システマティックレビュー/メタアナリシス)では、コクランのrisk of biasの方法に基づき評価がなされている。

 有効性に関する研究が膨大に存在するのに対し、経済性(医療費)に関わる研究はさほど多く見られない。経済性の方は、デジタルヘルスの方が既存技術に比べて優れているとするものと3) 、そうでないもの4)がミックスされているように見られるが、有効性の存在が経済的評価を行うというのが大原則であるとすれば5)、有効性が確認された分野で経済性に関わる研究が順次行われていくのであろう。

 技術進歩が極めて速いスピードのデジタルヘルス技術の有効性検証においても、医療機器や医薬品並みの質の高いエビデンスが必要だろうかという疑問が呈されたが、現時点では、医療機器や医薬品と同様に、医療保険から支払いがなされるのであれば、同様なエビデンスを求めるべきという意見が有力である6)。デジタルヘルスでは、比較的速いスピードでの患者受け入れができ、また盲検も不可能ではなく、デジタルヘルスを例外にする必要はないとされる7)

 昨年12月には、英国NICE(The National Institute for Health and Care Excellence)から「デジタルヘルス技術のエビデンスに関わる標準的フレームワーク」α版<試作品>が発表された8)。そこでは、デジタルヘルス技術を、患者のアウトカムに直接影響を及ぼさないTier1から、患者にとって便益がある治療・診断・モニタリングを行うTier3bまでに分類し、それぞれ必要なエビデンスレベルが示されている。Tier3bでは、RCTレベルまたはそれに準じるようなエビデンスが求められている。

 次回の本コラムから、これまで蓄積されたデジタルヘルス技術の有効性に関する膨大なエビデンスを順次紹介し、その課題、さらにはデジタルヘルス技術の開発方向等について探ってゆきたい。


[参考文献]

1)厚生労働省・薬食機参発1121第33号、薬食安発1121第1号、薬食監麻発1121第29号、平成26年11月21日 「医療機器プログラムの取扱いについて」

2)長谷川高志、他. 遠隔診療の有効性・安全性に関するエビデンスの飛躍的な創出を可能とする方策に関する研究. 日本遠隔医療学会雑誌. 2018; 14(2): 74-77.

3)例えば、Akiyama M, et.al. A Systematic Review of the Economic Evaluation of Telemedicine in Japan. J Prev Med Public Health. 2016 Jul;49(4):183-96や、Delgoshaei B, et.al. Telemedicine: A systematic review of economic evaluations. Med J Islam Repub Iran. 2017 Dec 20;31:113.

4)例えば、Ashwood JS, et.al. Direct-To-Consumer Telehealth May Increase Access To Care But Does Not Decrease Spending. Health Aff (Millwood). 2017 Mar 1;36(3):485-491

5)Drummond MF, et.al. Methods for the Economic Evaluation of Health Care Programmes (4th edition). 翻訳:保健医療の経済評価(篠原出版社)2017

6)Greaves F, et al. What is an appropriate level of evidence for a digital health intervention? Lancet. 2019 Dec 22;392(10165):2665-7.

7)Espie CA, et.al. Digital medicine needs to work. Lancet. 2018 Dec 22 2018;392(10165):2694.

8)NICE. Evidence standards framework for digital health technologies. December2018 (https://www.nice.org.uk/about/what-we-do/our-programmes/evidence-standards-framework-for-digital-health-technologies から2019年2月24日にダウンロード)

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