在宅高齢者の入院原因の多くを占める心不全。人口高齢化に伴い心不全患者が激増し、医療施設の対応能力を超える「心不全パンデミック」が起こることが危惧されています。心不全はあらゆる心疾患の末期像であり、一度心不全が発症すると、現在の治療では改善は難しく、遠隔モニタリングによる予防管理が期待されています。その効果は果たして?(編集部)

 高齢化の進展などに伴い、心不全の入院患者は毎年1万人以上のペースで増加し1)、心不全患者の管理は大きな課題になっている。心不全に対するデジタルヘルスからの取り組みが各国でなされ、臨床研究も数多く行われている。

 デジタル技術を使った心不全患者の管理には、大きく分けて、以前から行われてきたCRT(両心室ペーシング)等の体内植込み型のデバイスに遠隔モニタリング機能が付加されたものと、植込み型のデバイスを用いないで、患者の体重や脈拍、SpO2などの状況を遠隔モニタリングするものとがある。

 体内植込み型のデバイスに遠隔モニタリング機能が付加されたものは、総診察回数や不適切な電気ショック(除細動)の減少など一定の有効性が認められてきている2,3)。日本の診療報酬では、かねてから「心臓ペースメーカー指導管理料(遠隔モニタリング加算)」として評価されていて、また、2018年4月改定でも増点された。

 今回は、まだ臨床評価が十分に定まっていない、植込み型のデバイスを使わない遠隔モニタリングのエビデンスを見ていく。

 定期的な通院をベースとした従来型の管理方法に比べて、遠隔モニタリングによる心不全患者管理システムは、死亡率と入院率の減少をもたらすと、質の高いシステマティックレビューとして定評のあるコクランレビューが2010年に結論づける4)など、当初は有効性が明確な技術・システムとみられていた。しかし、2010年代初期に発表された複数の大規模スタディー5,6)においてネガティブな結果が示され、遠隔モニタリングによる心不全患者管理システムに対して疑問が投げ掛けられた。

植込みデバイスを用いない遠隔モニタリングの有効性

 その後、さらに多くの臨床研究がなされ、この数年間に発表された5つのシステマティックレビュー並びにメタアナリシスの結果を整理したのが表1である7,8,9,10,11)

表1 植込みデバイスを用いない遠隔モニタリングの有効性研究のシステマティックレビュー並びにメタアナリシスの結果(筆者作成)

 Kotbら(2015)は主に遠隔モニタリングの方法間の関係、またPekmezarisら(2018)はフォローアップ期間の違いを検証することに主眼が置かれているなど、それぞれ狙いが異なる部分はあるが、表1を概括すると、概ね死亡率の減少(全原因および心不全関連)および心不全関連の入院の減少が見られていて、全体として、遠隔モニタリングによる心不全患者管理システムの有効性が認められてきている。

 さらに2018年には、以前にネガティブな結果が見られた大規模スタディーTIM-HF(The Telemedical Interventional Management in Heart Failure)の改良版として、TIM-HF2の結果が発表され、全死亡率と予定外の心疾患入院率の減少が果たされたことが明らかになった12)

有効性を左右する要素

 ネガティブな結果が出たものも含め、これらの膨大な臨床研究の結果から、何が有効性を決めるポイントかについて考えたい。それには、大きく2つある。

1)遠隔モニタリングの具体的方法

 1つは、遠隔モニタリングの中身、すなわち、何をやっているかである。冒頭で、「患者の体重や脈拍、SpO2等の状況を遠隔モニタリングするもの」と述べたが、実際にやっていることには相当の幅がある。

 患者が自分で測定したデータを、電話やスマートフォンで入力して、それに対してナースなどから電話が入り、適宜指導を受けるという形が、心不全患者に対する遠隔モニタリングの標準的な方法であるが、TIM-HF2でなされたものは、表2のように包括的で手厚い仕組みになっている。

表2 TIM-HF2でなされた包括的で手厚い仕組み

 一口で「遠隔モニタリング」と言っても、情報収集、分析、フォローなどの方法に様々な違いがあり、それらにより有効性に差があるのは当然のことであろう。

 ここで問題となるのは、それぞれのシステムのどの要素が有効性をもたらしているか、である。従来行われてきた研究のほとんどは、遠隔モニタリングと非遠隔モニタリング群の比較であり、head-to-head(直接対決)のスタディーはないため、方法間の差は明確になっていない。

 Inglisら(2015)は、システマティックレビューに当たり、管理方法を2つに分けた。種々の臨床データをBluetoothなどによりデジタル的に転送する「遠隔モニタリング(telemonitoring)」と、従来の電話機能のみを使う「システム化された遠隔サポート(structured telephone support)」である。両者に分けたのは、「遠隔モニタリング(telemonitoring)」の操作の方が自動的であるため、不安定期の患者などにも有用であるとみられたからである。その結果、間接的ではあるが、異なるフォローアップ期間の検討から、「遠隔モニタリング(telemonitoring)」の方が当初から有効性を発揮しやすいとの示唆が得られている。

 Kotbら(2015)は方法間の差を明らかにするために、遠隔モニタリングを5つの方法に分類し(心電図データ転送の有無やデジタル的にデータ転送するか否か等)、それぞれの関係をネットワークメタアナリシスで分析しているが、あまり一貫した結果は得られていない。

2)対象者の特性

 もう1つは、対象を誰にするかである。

 TIM-HF2では、前身のスタディーであるTIM-HFのサブ解析の結果に基づき、対象者をNYHAのクラスIIとIIIで、過去1年間に心不全による入院経験のある人、さらに、うつ傾向にない人に限定したことにより遠隔モニタリング方法の改善と相まって、有効性を示すことができたとみられる。

 また、Inglisら(2015)によると、「遠隔モニタリング(telemonitoring)」を用いたスタディーでは、70歳以上の患者では心不全関連の入院が43%も減少したのに対し、70歳未満では25%の減少にとどまった。

まとめ

 これまで、極めて多くの臨床研究がなされてきており、途中、ネガティブな結果も見られたが、適切な対象に対して、よく練られた遠隔モニタリングのシステムを構築できれば、心不全の領域では有効性を発揮することは十分に可能とみられた。

 ただし、費用や各種インフラという制約条件、さらには異なる医療環境の中で、各地域によってどのようなシステムを構築すべきかが課題であり、限られた資源で有効性を発揮できるシステム構築の工夫が求められる。


[参考文献]

1)一般社団法人日本循環器学会. 循環器疾患診療実態調査報告書(2017年度実施・公表)

2)Parthiban N, et.al. Remote Monitoring of Implantable Cardioverter-Defibrillators: A Systematic Review and Meta-Analysis of Clinical Outcomes. J Am Coll Cardiol. 2015 Jun 23;65(24):2591-600.

3)Klersy C, et.al. Effect of telemonitoring of cardiac implantable electronic devices on healthcare utilization: a meta-analysis of randomized controlled trials in patients with heart failure. Eur J Heart Fail. 2016 Feb;18(2):195-204.

4)Inglis SC, et.al. Structured telephone support or telemonitoring programmes for patients with chronic heart failure. Cochrane Database Syst Rev. 2010 Aug 4;(8)

5)Chaudhry SI, Telemonitoring in patients with heart failure. N Engl J Med. 2010 Dec 9;363(24):2301-9.

6)Koehler F, Impact of remote telemedical management on mortality and hospitalizations in ambulatory patients with chronic heart failure: the telemedical interventional monitoring in heart failure study. Circulation. 2011 May 3;123(17):1873-80.

7)Pekmezaris R, et.al. Home Telemonitoring In Heart Failure: A Systematic Review And Meta-Analysis. Health Aff (Millwood). 2018 Dec;37(12):1983-9.

8)Yun JE, et.al. Comparative Effectiveness of Telemonitoring Versus Usual Care for Heart Failure: A Systematic Review and Meta-analysis. J Card Fail. 2018 Jan;24(1):19-28.

9)Lin MH, Clinical effectiveness of telemedicine for chronic heart failure: a systematic review and meta-analysis. J Investig Med. 2017 Jun;65(5):899-911.

10)Kotb A, et.al. Comparative effectiveness of different forms of telemedicine for individuals with heart failure (HF): a systematic review and network meta-analysis. PLoS One. 2015 Feb 25;10(2):e0118681.

11)Inglis SC, et.al. Structured telephone support or non-invasive telemonitoring for patients with heart failure. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Oct 31;(10).

12)Koehler F, et.al. Efficacy of telemedical interventional management in patients with heart failure (TIM-HF2): a randomised, controlled, parallel-group, unmasked trial. Lancet. 2018 Sep 22;392(10152):1047-57.

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