これまで4回にわたる連載で、心不全、糖尿病、健康行動変容といった、デジタルヘルス技術がよく用いられている疾患・健康問題についての有効性エビデンスについて論じてきた。今回は、高血圧やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支喘息、精神関連などその他の疾患、服薬管理、リハビリテーション等に関するシステマティックレビュー・メタアナリシスのエビデンスを見ていく。

<慢性疾患に対するデジタルヘルス技術>

 慢性疾患対象のデジタルヘルス技術の有効性エビデンスとして、高血圧、COPD、喘息の3つを紹介する。

高血圧患者に対するモバイルアプリ1)

 まず、高血圧対象のアプリであるが、ゴール設定やセルフモニタリング、自動フィードバック・リマインダー、そして、教育情報、医療従事者とのコミュニケーション等の機能が備わっていた。ランダム化比較試験(RCT)により血圧低下を評価した9研究のうち、6研究では降圧効果が見られた。どの機能の組み合わせがより効果があったかは結論づけられないが、より包括的な機能のあるアプリが高い効果を示したとしている。

COPD患者に対するモバイルアプリ2)

 次にCOPDであるが、アプリでは、対象者がSpO2(酸素飽和度)や脈拍数、歩数、血圧、服薬・食事・運動状況を入力すると、医療従事者が個別にフィードバックを行う。6つのRCTのメタアナリシスの結果、コントロール群に比して、介入群では入院率が低かったが、平均在院日数に差は見られなかった。5つの研究では、運動・活動レベルの向上が明確に見られていた。

思春期喘息患者に対するモバイルアプリ3)

 モバイルアプリの有効性に関するRCT研究は存在しなかったが、2つの試験的介入研究では、アプリ使用前後で喘息コントロールテスト、自己効力感、薬物療法へのアドヒアランス等の結果が改善していた。3つの観察研究では、服薬や通院のリマインド機能等に関して、アプリの有用な側面が明らかになっていた。全体としては、潜在的な有効性を示していたが、質の高いエビデンスの創出は今後の段階である。

<精神関連疾患に対するデジタルヘルス技術>

物質使用障害(薬物、麻薬)に対するデジタル療法4)

 物質使用障害の再発防止のためには長期のフォローが必要である一方で、状況が急変したときへの迅速な対応が求められるため、デジタルを用いた方法は広がりつつある。介入方法として、比較的単純なものと複雑なものがあった。単純な加入とは、モバイル/ウェブによるメッセージやオンラインのカウンセリングなどで、複雑なものは、モバイル/ウェブが複数のモジュールに分かれていて情報提供やモニタリングがなされたり、相互やりとりが可能なモバイル/ウェブのシステム、さらにそれらがオンラインのカウンセリングと組み合わされたものなどであった。

 23の比較研究のうち、半数以上の研究でポジティブな結果が得られた。比較的単純な介入と複雑な介入で結果を比較すると、単純な介入を用いた研究の47%で、複雑の介入の研究の67%でポジティブな結果が得られていた(しかし、単純な介入の研究の方が、コントロール群に対して行われている対応が比較的強力であったため、統計学的にはポジティブな結果が出にくいことから、結果の解釈は要注意とのこと)。

出産前後のうつ病に対する遠隔医療5)

 妊娠中から出産後1年までの期間のうつ病に対する遠隔医療の有効性評価がなされた。手法としては、認知行動療法や行動活性化療法等をベースとして、コーチング、フォローアップのための電話、モニタリング、元気づけ、教育資料の送付のためのEメールなどであった。有効性の指標によるが、全体としては、約80%の研究で介入群に効果が見られていた。Eメール送付や情報提供には、ウェブベースのものと、スマートフォンのアプリを使ったものがあったが、効果が見られなかったものは、それぞれ一つずつであり、介入方法の違いは明確でなかった。

認知症患者に対するペットロボット6)

 日本の産業技術総合研究所が開発し、2005年に日本で販売が開始されたセラピー用アザラシ型ロボット「パロ」7)のメタアナリシスによると、従来の治療・ケア方法に比較して、ペットロボットが使われた群では、認知症の症状である興奮・抑うつは有意に減少させたが、認知機能と生活の質改善には結びついていなかった。従来の研究では、集団の中でロボットを用いられた研究で有効性が高いという知見もあったが、今回の解析では、個人のニーズに沿った使われ方ができているためか、個人で用いられている場合でも効果が見られていた。

セラピー用アザラシ型ロボット「パロ」(写真:大和ハウス工業)

<服薬管理やリハビリに対するモバイルアプリ>

服薬に伴う症状変化・副作用モニタリングを行うeHealthツール8)

 服薬状況、副作用を含む症状変化等を入力し、それに対して、服薬のリマインダー、患者教育情報等が送付され、加えて、臨床医とのコミュニケーションができるeHealthツールの有効性システマティックレビューによると、介入群では、コントロール群に比して処方開始・変更に対する適切な行動が有意に増えており、患者症状も概ね改善していた。対象は、糖尿病患者や喘息患者、がん患者等であったが、症状改善は、特に若年層の喘息患者で明確に見られていた。また、自己効力感(self-efficacy)も改善していたが、一方で、服薬アドヒアランス、臨床医による処方や受療行動、副作用等には、介入群と対照群で差異が見られなかった。患者の症状が悪化した場合や副作用が見られた場合には、臨床医がコミュニケーションを取ることが望ましいとされた。

mHealthによる高血圧患者の服薬アドヒアランス9)

 毎日送られる服薬リマインダーと週ベースの教育情報を中心としたmHealthツールの有効性システマティックレビューの結果、介入群の服薬アドヒアランスは向上していた10)。服薬リマインダーの送付頻度は多過ぎるとネガティブな影響があるとされ11)、対象者が頻度を選択できるものもあった。医療従事者とのコミュニケーションができるものとできないものがあったが、高血圧患者を対象とした、このmHealthによる服薬アドヒアランスのシステマティックレビュー9)では明確な差は見られなかった。

【その他】

脳卒中患者に対する電話リハビリテーション12)

 15のRCT研究によると、遠隔で行うリハビリテーションは、通常の医療機関におけるものと比較して、日常活動・生活機能(Barthel Index、Berg Balance Scale)や運動機能(Fugl-Meyer Upper Extremity、Action Research Arm Test等)、健康関連QOL、介護者のストレスで差異が見られず、遠隔リハビリは通常のリハビリプログラムの代替するものとして適切と結論づけられていた。

 コストを算出した1研究では、遠隔リハビリの方が、654ドル低い結果となっていた(1490ドル vs. 854ドル)。

モバイルアプリによる疼痛管理13)

 アプリの中身は疼痛の種類により様々であった。月経痛の場合には、指圧の場所やタイミングなどで、腰痛の場合は、一般的な情報提供に加えて、個別のケースに応じた認知行動アプローチの方法により、鎌形赤血球症の場合は、呼吸法や筋弛緩法等の対処法などについての情報提供・教育等であった。4つのRCTで、コントロール群に比して痛みの改善が見られた。1つのRCTでは改善が見られなかった。5つの単群研究では、いずれも痛みの改善が見られた。

<デジタルヘルス技術の有効性エビデンスに関するまとめ>

 これまで5回にわたり、デジタルヘルス技術の有効性エビデンスのシステマティックレビュー・メタアナリシスを中心に紹介・考察してきたが、改めて、全体を俯瞰してみたい。もとより、個々の技術、対象によって、大きく状況は異なるが、あえてここまでのレビューで見られたことを整理する。

  • システマティックレビュー・メタアナリシスを見る限り、全体としては、かなり多くのデジタルヘルス技術の有効性が示されていた。種々のバイアスも存在していたが、全体としては許容される範囲であったといえる。

  • 一方で、1型糖尿病に対するスマホアプリのように有効性がほとんど見られないものもあった。減量のためのアプリも効果が見られないものが多くあった。

  • デジタルヘルス技術の有効性には、医療従事者・専門家の関与がキーとなっていることが多い。デジタル技術そのものは時間・空間を超えて、患者・対象者にとって利用可能なものであるが、医療従事者・専門家の関与は依然重要であった。

  • 比較的単純な知識の伝達や、単純な行動の変容であれば、医療従事者・専門家が関与しなくても有効性は見られていた。

  • アプリや機器の操作性は重要である。手間がかかり過ぎると、嫌気がさしてしまうこともあった。また、リマインダーの頻度が高過ぎるのも同様とのことであり、適度な介入が求められる。

  • ここまでレビューしてきた技術は、スマホアプリに対象者が自分で入力する形式のものが多かったが、ウェアラブルや埋込デバイスなど、身体情報の測定がより自動化されたものと連動すると高い有効性を発揮すると期待される。

 医療サービス利用の頻度等やコストの影響についても、これまでのコラムで一部触れたが、次回のコラムでは経済的なことを中心に見ていきたい。


[参考文献]

1) Alessa T, et.al. Mobile Apps to Support the Self-Management of Hypertension: Systematic Review of Effectiveness, Usability, and User Satisfaction. JMIR Mhealth Uhealth. 2018 Jul 23;6(7):e10723.

2)Yang F, at.al. Mobile health applications in self-management of patients with chronic obstructive pulmonary disease: a systematic review and meta-analysis of their efficacy. BMC Pulm Med. 2018 Sep 4;18(1):147.

3)Alquran A, Smartphone Applications for Encouraging Asthma Self-Management in Adolescents: A Systematic Review. Int J Environ Res Public Health. 2018 Oct 29;15(11). pii: E2403.

4) Nesvåg S, et.al. Feasibility and Effects of Digital Interventions to Support People in Recovery From Substance Use Disorders: Systematic Review. J Med Internet Res. 2018 Aug 23;20(8):e255.

5)Nair U, et.al. The effectiveness of telemedicine interventions to address maternal depression: A systematic review and meta-analysis. J Telemed Telecare. 2018 Dec;24(10):639-50.

6) Leng M, et.al. Pet robot intervention for people with dementia: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Psychiatry Res. 2019 Jan;271:516-25.

7)http://paro.jp/?page_id=293

8)Lancaster K, et.al. The Use and Effects of Electronic Health Tools for Patient Self-Monitoring and Reporting of Outcomes Following Medication Use: Systematic Review. J Med Internet Res. 2018 Dec 18;20(12):e294.

9)Xiong S, et.al. Effectiveness of mHealth Interventions in Improving Medication Adherence Among People with Hypertension: a Systematic Review. Curr Hypertens Rep. 2018 Aug 7;20(10):86.

10)システマティックレビューの対象とした21研究の全てでアドヒアランスの改善が示されていたが、検定がなされていなかったものも5つあり、統計的に有意であったのは12のみ。

11)Finitsis DJ, et.al. Text message intervention designs to promote adherence to antiretroviral therapy (ART): a meta-analysis of randomized controlled trials. PLoS One. 2014 Feb 5;9(2):e88166.

12) Tchero H, et.al. Telerehabilitation for Stroke Survivors: Systematic Review and Meta-Analysis. J Med Internet Res. 2018 Oct 26;20(10):e10867.

13) Thurnheer SE, et.al. Benefits of Mobile Apps in Pain Management: Systematic Review. JMIR Mhealth Uhealth. 2018 Oct 22;6(10):e11231.

(タイトル部のImage:Monster Ztudio -stock.adobe.com)