ここまで5回の連載で、デジタルヘルスの有効性エビデンスについて論じてきた。今回は、最近論文として出版された、遠隔画像診断や遠隔診療、mHealth(モバイルヘルス技術)などの経済性に関する研究(コスト分析、費用対効果分析等)をレビューした。これまでの有効性エビデンスは、システマティックレビュー(メタアナリシス)が中心であったが、医療経済的な研究ではシステマティックレビューがさほど多くなく、今回のレビューは個々の実証・シミュレーション研究が中心である1)

<遠隔診断>

 はじめに、遠隔診断であるが、診断場所と診察場所の距離が長ければ、経済性は高いという一貫した結果が見られていた。

遠隔画像診断

 まず、北海道での遠隔画像診断のコスト研究である2)。札幌市から50km、100km、150km離れた地域医療機関が、札幌市内の医療機関による遠隔画像診断の支援を受ける場合と、月に4回、札幌市の放射線診断医が50km以上離れた地域医療機関を訪問する場合とのコスト比較を実施したところ(月間30検査と仮定)、画像診断を依頼する地域医療機関にとっては、距離が100km以上離れた場合に遠隔画像診断の方が低コストであり、高い経済性が示された。

未熟児網膜症の遠隔スクリーニング

 次に、カナダでの未熟児網膜症の遠隔スクリーニングである3)。カナダのトロント市から400km離れたSudburyの医療機関と、90kmのBarrieの医療機関で生まれた未熟児を、遠隔診断した場合と、トロントまで搬送した場合のコストが比較された。距離の離れたSudburyでは、遠隔診断の方が、約1万5000ドルのコスト削減になったが、距離の近いBarrieでは、反対に遠隔診断の方が約2100ドルのコスト高になった(ただし、対象者の数が増減した場合は、この結果は変わり得る)。

遠隔眼科診断

 糖尿病網膜症発見のためのカナダ・マニトバでの過去6年間の遠隔診断のコスト分析がなされた4)。地域医療機関で撮影された眼底検査の画像を医療センターの専門医に送って診断支援を行う。この仕組みにより、遠隔画像診断の方が、通常の診療所での検査に比較して、1回当たり1007ドルのコスト削減になった。