サンフランシスコ市長のLondon Breedが太平洋をいずれ越えて上陸するであろう新型コロナウイルスに備え、同市内ではまだ1人も感染者を確認していないにも関わらずサンフランシスコ地域における緊急事態宣言をしたのは2月25日。当初は若干やりすぎなのでは的な反応も見られたが、2週間たった今、シリコンバレーでの状況は日に日に深刻化している。

 GoogleやAppleが本社を置くシリコンバレーの中心地Santa Clara郡で1月31日に最初の症例が確認されて以降、ベイエリア(実はシリコンバレーという名称は日常ではほとんど使われません。“ベイエリア”や“ペニンシュラ”を使ったほうがローカルっぽい雰囲気がでます)全体で74人の発症が確認されている。

 対応の早い企業に勤めている人は出張が禁止になったり、政府の方針でアメリカへ帰国できなくなるリスクを考慮して(特に)日本向けの出張をキャンセルしたりするケースが頻発したおかげで、普段なかなか都合がつかない人とキャッチアップするいい機会となっている――そんな若干呑気な会話も周りからは聞こえてくる。

 実際にシリコンバレーではマスクを着けて歩いている人を見かけることもほとんどない。一部のレストランは客足が遠のいているという話を良く聞く一方で、筆者が先週末に立ち寄った近所のブルーワリーはいつも以上の賑わいを見せていた。住民の普段の行動パターンから極端な変化はまだ見られない。

CVSの薬局でのサイン。使い捨て手袋、除菌ハンドジェル、ウェットティッシュ、マスクが売り切れている(写真:筆者が撮影、以下同)

 過去に感染症の大規模拡大危機を経験したことのないアメリカにとって、新型コロナウイルスは未知の領域であり、唯一の参照事例は「アウトブレーク」のような映画の世界にとどまっている。2020年iTunes映画レンタルランキングのトップ10に9年前にリリースされた感染症パニック映画「Contagion」がランクインしているのは、いまだにハリウッド的な非現実感を抱いているからなのかもしれない。

 しかし近所の薬局に足を向けると除菌ジェルや使い捨て手袋などが品切れ状態だったり、今まで置かれていなかったスーパーの入口付近にティッシュやトイレットペーパーが山積みにされていたりするなど確実に変化がみられる。新型コロナ感染拡大に向けて備えている人たちが増えてきている証拠だろう。

Walgreensでも使い捨て手袋が品切れ状態
Walgreensではティッシュが品切れ状態
Trader Joe’sでは普段フルーツやアボカドが陳列されている場所にティッシュとトイレットペーパーが山積みになっていた

 サンフランシスコ市内でも学生の親戚や従業員の感染が確認されたために一部の学校が休校となるなど、新型コロナウイルスの影響を日に日に感じられるようになっている。