「ウエアラブル」と同じ雰囲気

Calm社の瞑想アプリのイメージ(出所:Calm社のプレスキット)

 しかし、この状況に対して筆者は2010年代の「ウエアラブル」に対する盛り上がりと同様の雰囲気を感じている。

 代表的な1社が、ウエアラブルという言葉の浸透をけん引したFitbit社。2014年の売上7.5億米ドルという驚異的な実績をひっさげて、2015年にIPO(新規株式公開)を成功させ、一時は100億米ドル越えという圧巻の時価総額を記録した。

 この他、Misfit社は6440万米ドルを調達した後、2015年に時計会社のFossil Group社に2.6億米ドルで買収された。個人的にはあまり成功のイメージがないBasis Science社でさえ、4350万米ドルを調達した後に2014年にIntel社に1億米ドルで買収されたのだ。

 ベンチャー投資家目線では、ウエアラブルは“EXIT(株式公開や事業売却)祭り”で一件落着した。しかし実際のビジネスとしてとらえるとどうだろうか。Intel社は2017年にウエアラブル部門の閉鎖を発表。Fitbit社は2018年にようやく黒字化を達成したものの、IPO翌年の2016年をピークに売り上げは下がっている。時価総額に至ってはピーク時の10分の1だ。Fossil Group社もウエアラブルの売上は好調である一方で、従来の時計からの収益が下がっていて株価は低迷している。

 ウエアラブルはビジネス面では失敗だったのだろうか?

 実は筆者は、Fitbit社に大きな期待感を抱いている。近年Apple社に1位のポジションを受け渡したが、累計出荷台数約9000万台、アクティブユーザー2760万人(2018年末時点、Fitbit社発表)という存在感を誇る同社が、この数年、医療領域での新たなビジネスモデル創出に挑戦しているからだ。

 特に糖尿病にフォーカスし、2017年9月には持続血糖値モニター大手のDexcom社との共同開発を提携。その直後に、FDA(米国食品医薬品局)による医療用ソフトウエアの承認プロセスを簡易化するプログラム「Pre-Cert Pilot Program」に認定された9社のうちの1社となった。さらに2018年には、血糖値モニタリングソリューションを開発しているSano Intelligence社に600万米ドルを出資している。

 サービス事業の強化にも尽力している。2018年2月にはクラウド上で慢性疾患管理プラットフォームを展開するTwine Health社の買収をてこに、ユーザーとヘルスコーチをつなぐFitbit Careプラットフォームを立ち上げた。

 これらの新たな事業はまだまだ立ち上ったばかり。ただし、近年のFitbit社の売上のマイナス成長の中では、将来の新たな軸になるかもしれない事業と見ることもできる。ハードウエア企業だったFitbit社が、いつの間にかサービスの会社に方向転換していく可能性も否定できない。