第2の狙い

本格的な「医療とウェルネスの融合」が生む新しいヘルスケアソリューション

 Apple Watchの医療機器許認可獲得や、Amazon社によるPill Pack社とHealth Navigator社の買収、Facebook社が最近発表した健診リマインド機能…。近年、ものすごいスピードでITと医療の融合が進んでいるのは周知の事実である。

 これらはIT企業が自社プラットフォームにヘルスケア関連アプリケーションを乗せるものであったり、医療プレーヤーがITを導入して自社製品の機能を高めたりするもので、新たなフロンティアを切り開いている。一方でウェルネスと医療の垣根を本格的に破壊するような動きとは言い難い。

 それをGoogleがFitbitの買収を通じて変える可能性は十分に考えられる。

 ウエアラブルが医療と親和性が高いのは発想を飛ばさなくても理解できるだろう。そしてFitbitはコンシューマ向けウエアラブルのパイオニアでありながら、近年Medtronic社やDexcom社との糖尿病管理関連ソリューション、BMS社やPfizer社との心房細動向けソリューションを開発し、企業向け従業員健康管理サービス事業の立ち上げなどを推し進めていた。

 Fitbitはウエアラブル事業を展開している企業の中でも、最もウェルネスと医療の融合に力を入れてきた会社であるといっても過言ではないだろう。今回の買収でそのFitbitが、IT企業でありながら既に本格的なライフサイエンスの事業を展開しているGoogleの傘下に入るのだ。

 Google系列では、前回のコラムで触れたデジタル手術事業だけでなく、Verily Life Science社は多岐にわたる本格的なライフサイエンス事業を展開している。さらにDeep Mind社(Deep Mind Health社)にてAIの医療活用、Calico社ではLongevity系の創薬開発にも取り組んでいる。

 買収後にFitbitがGoogle内でどのような扱いを受けるのかはまだ発表されていない。Nest Labのように独立した会社として運営する、Googleのハードウエア部門の一部になりGoogle Fitbitとして展開する、将来的にVerilyに組み込まれる、などの可能性が考えられる。

 GoogleはFitbitが持つ個人情報やウェルネスデータが広告ビジネス目的に使われることはないとしているが、医療目的の使用に関しては言及していない1。仮にVerilyのプロジェクト群に、Fitbitが長年蓄積したコンシューマの活動データとそれに伴うインサイトやノウハウを組み合わせれば(さらそこにGoogleのAIをかける!)、ヘルスケアに対する全く新しいアプローチやソリューションが生まれる可能性は十分にある。

 実際、既にVerilyの中にはOnduoのようなウエアラブルを活用した慢性疾患管理を行うプロジェクトや、心臓モニタリングウエアラブルのiRhythm社と取り組んでいる心房細動のプロジェクトなど、Fitbitと組み合わせることでさらなる展開が期待できるプロジェクトが幾つも存在している。

 思い出してみると、2017年に米国FDAがデジタルヘルス向けの新しい承認プロセス導入に向けて開始した「Pre-Cert Pilot Program」では、認定された9社の中にVerilyとFitbitも名を連ねていた。この2社が協力して、新たなヘルスケアのフロンティアを切り開いていくのは必然なのかもしれない。