音を使って深睡眠をブースト

岡島 ヘッドバンドと専用スマホアプリの2つで、睡眠をコントロールしていくのですね。使い方や仕組みを詳しく教えてください。

安部 軟らかい布素材のヘッドバンドの額に当たる位置にセンサーが入っています。寝るときにこのヘッドバンドを装着し、同時に耳の後ろにセンサーが付いたシールを貼り、ヘッドバンドとシールの2点で睡眠時の脳波と睡眠の状態を測定し記録します。専用アプリSleepMapper(スリープマッパー)をダウンロードして連携しておくと、朝起きたときにブルートゥースでデータをスマホと同期させて、睡眠状態を確認できます。

ヘッドバンドとペアリングして、健康睡眠スコア、睡眠段階の推移、深睡眠の見える化など、各種データをチェックできる(出所:フィリップス)

岡島 睡眠の状態を数字にして、見える化しているのですね。普段の生活の中で自分で脳波をとるのは睡眠研究者の夢ですから、画期的な技術ですね!

安部 それだけではなく、ヘッドバンドに音の出る機器が組み込まれているのも特徴です。脳波から深睡眠を検知すると、ヘッドバンドから柔らかいオーディオトーン(音)が流れます。深睡眠をブーストし、睡眠の質を高めるのが狙いで開発されています。

岡島 ブースト、つまり時間を長くするというイメージですね。睡眠をよくするためには「音を消して静かにする」もしくは「就寝前に入眠しやすい音を出す」といった手法が一般的です。眠った後に敢えて音を出すというのは、面白い発想ですね。どんな音がよいのか、かなり研究されたのでしょうか。

安部 500〜2000ヘルツの間のやわらかい音を鳴らしています。ただ、深睡眠に入ってから音が出るので、本人には全く聞こえていません。私が試したときもどんな音かは分かりませんでした。音の出るタイミングや音量は睡眠の状態に合わせて自動的に調整されます。

株式会社フィリップス・ジャパン スリープ&レスピラトリーケア事業部長 安部美佐子(あべ・みさこ)氏
大学卒業後、米国留学を経て米系スポーツメーカーに就職。その後外資系投資銀行に転職し、金融派生商品の営業・マーケティングとして10年間法人営業を担当。より人の生活に直接役立つ仕事に関わりたいと思い、米国でMBA取得後、医療機器業界に入る。在宅医療業界に約15年携わり、ファイナンス・経営企画・営業などの経験を積んだ後、2012年にフィリップス・ジャパンに入社。人工呼吸器や睡眠時無呼吸症候群の診断・治療装置を扱う部門を率いている(写真:高山 透)

岡島 実際に使った方からは、どんな感想が寄せられていますか。

安部 「朝、すっきり目覚めるので起きやすい」「いつも日中眠くなる時間に、眠気を感じなかった」といった感想が届いています。

岡島 シニアのように深睡眠があまり出なくなっている方でも、この音を聞くと深睡眠に入りやすいという効果もありますか。

安部 効果という面では、深睡眠の量が多い若い方のほうが効果は高いので、推奨する対象者は「18歳以上50歳以下」と注意書きを入れてあります。

岡島 スリープテック関連の商品やサービスを見てきた中で、禁忌をうたうものは少ないですね。「どんな人にも効きますよ」と宣伝したくなるのでしょう。でも、スリープテック市場では、「この年齢層」「こういう生活の人」と対象を明確にすることも大事だと思うのです。CPAP(睡眠時無呼吸治療装置)などの医療機器も作っているからこそ、禁忌を明確にすることの重要性を感じているのでしょうね。

安部 おっしゃる通りです。50歳を超えてもブーストする方もあると思いますが、やはり20代~40代の方に比べると効果は低くなると思います。

岡島 女性は歳をとってからも深睡眠が残っていることが多いので、使い続けられるかもしれません。それと、高齢者もきちんと運動していれば負荷が上がって深睡眠が残るイメージを持っているので、それなら高齢者でも効果があるはずです。そのあたりは、これから研究できると面白いですね。