2週間限定で取り組む、企業向け有償アプリを開発中

岡島 『睡眠日誌』から発展して、何かほかに取り組んでいることはありますか?

秋冨 『睡眠日誌』で蓄積したデータや経験値をもとに、今は『睡眠習慣改善アプリ』を研究開発しています。『睡眠日誌』のエッセンスを凝縮させ、効率のいいコンテンツを提供したいと思っています。世の中のアプリは睡眠に限らず、継続しないのが一番の課題なので、2週間で区切って取り組むものです。

NECソリューションイノベータ イノベーションラボラトリ主任 兼 イノベーション戦略本部主任の秋冨穣氏。研究職・データサイエンティストとしてDNA配列の解析やアワビの飼育などを担当したのち、ヘルスケアアプリ担当に

岡島 『睡眠日誌』とはどんな点が違うんですか?

秋冨 『睡眠日誌』は記録をつけて自分の行動を意識し、学習するためのアプリです。一方、『睡眠習慣改善アプリ』では最初に生活習慣のアンケートに答えてもらい、アプリ側がアンケート内容を分析してその人に合った生活習慣改善法を提案します。例えば「朝日を浴びたら寝付きが良くなりますよ」といった複数のアドバイスをするので、その中からできるものを選んで取り組めばOK。同時に睡眠の状況も記録していくと、1週間ごとにフィードバックレポートが出てくる仕組みです。

岡島 フィードバックレポートで問題点を指摘してくれる機能は『睡眠日誌』にもありますよね。

秋冨 『睡眠習慣改善アプリ』は一歩進んで、その人の状況に合わせてアプリがコーチングしてくれるのが特徴です。「朝日を浴びるといい」と言われてもできなかった人には「犬の散歩に行くと朝日を浴びられる」「ゴミ出ししてみたら」といったアドバイスを送り、行動変容をサポートします。並行して、その人に合ったテーマのコラムを発信して、睡眠の知識も付けてもらいます。

岡島 コーチングをもとにプログラムを2週間実施すると、一通り生活習慣が身に付きそうですね。実験では、どのくらいの効果が出ていますか?

秋冨 実証実験では、92人のランダム化比較試験(RCT)で有意なデータが出て、アテネ不眠尺度(AIS)が改善しただけでなく、生産性も上がるというエビデンスが得られました。

岡島 ランダマイズした試験で明確な効果が出たわけですね。いつ頃、世に出るのでしょう。

秋冨 『睡眠日誌』は誰でも無料で使えるアプリですが、『睡眠習慣改善アプリ』は主に企業向けに、有償で提供します。働き方改革が進んできたこともあり、睡眠を改善することで生産性をあげようと考える企業は今後も増えていくはずだからです。早い段階で提供開始できるように取り組んでいます。短期集中でエッセンスがギュッと凝縮した内容なので、処方箋的に使ってもらえるといいですね。

岡島 臨床の場でもそれは重要で「とりあえずやってきて」では、誰もやりません(笑)。でも、「まず1週間やって」だと取り組みやすいし、やれば変わったことに気づくから、次の1週間は自動的に取り組むようになります。「自転車に乗せて連れて行ってあげる」ではなく「自転車に乗れるようにサポートするから、あとは自分の好きなところに行って」というのが認知行動療法の目標ですから。

秋冨 実証実験のデータを見せるといろいろな人に驚かれますが、2週間後より1カ月後、3カ月の方が不眠の改善効果が高いんです。プログラムは2週間だから、その後は何もしていないのに効果が上がっています。セルフコントロールができているということで、まさに狙い通りです。