不眠はうつにも関連する健康の根幹、ゲームやメーカーとの連携の可能性も

岡島 睡眠は健康的な生活の根幹を支えていて、睡眠リズムの乱れはうつや不安にも関係していると分かってきています。例えば、不眠を訴えるうつ病の患者に(1)CBT-D(うつ病の認知行動療法)、(2)CBT-I(睡眠のための認知行動療法)の2種類の治療を試したら、CBT-Iだけで不眠とうつの両方が良くなったというデータもあります。確かに不眠を訴えるうつの人の中にはカウンセリングしてもなかなか効果がないけれど、睡眠が整ってくると徐々にいろいろなことに取り組めるようになるケースがあります。でも、うつの人に「まずは睡眠を整えて」と言ってもなかなか聞いてもらえません。どうすれば「睡眠から始める」ところに納得してもらえるかが課題ですね。

秋冨 睡眠に興味がない人にも「やってみよう」と思わせる流れができて、皆がアプリを使い始めると面白いですね。ポケモンのゲームアプリで、睡眠に関するデータをゲームに活用する「Pokemon Sleep」が発表されました。エンターテインメントを採り入れることも大事ですね。今、『睡眠習慣改善アプリ』には専門家アバターを入れていますが、この人に言われたらやりたくなる、というアバターを選べる仕組みがあってもいいかもしれません。

岡島 好きな動物キャラクターを選べたり、写真をはめ込んだりできるものもいいですね。娘の写真を入れて「パパ、頑張って」と励まされたら、がぜんやる気になるかもしれません(笑)。経済協力開発機構(OECD)の調査では、加盟国の中の睡眠時間の短さは日本と韓国が1位、2位を争っている状況です。日本では不眠で困っている人や潜在的な患者はたくさんいるのに、情報を得る手段はほとんどありません。潜在需要を掘り起こし、軽度な人はアプリで治し、病気の人はクリニックにつなげるなど、正しい睡眠の知識を提供していきたいですね。

秋冨 寝不足の人は寝付きが良いことが多いなど、不眠と寝不足は相反する面があるので寝不足の人は『睡眠習慣アプリ』の対象外と考えていたのですが、残業が多い会社で寝不足の人に聞くと、「夜遅く家に帰って、短時間だけでも寝ようと思うけど眠れない」という不眠の悩みがあることが分かりました。そうなると寝不足の人も対象に入ってくるから、対象者の範囲はさらに広がります。

岡島 自分でアクションを起こすのが認知行動療法のモットーですが、例えば「光を浴びるのが効果的」となったら朝の光を採り入れるのが得意な企業と提携するとか、室温が大事であればエアコンメーカーと手を組むなど、いろいろな分野に広がる可能性がありますね。睡眠は衣食住すべてに関わってくることなので、アプリで睡眠機能を充実させるだけではなく、周辺環境を整えたり企業と連携できたりする余地があるはず。日本全体で睡眠産業を盛り上げていけば、日本に留まらず世界にも広がっていくはずだと考えています。

(タイトル部のImage:tippapatt / popyconcept -stock.adobe.com)