旅する楽しみが抑制されたまま早2年が過ぎようとしているが、業界はアフターコロナを見据えて新たな指針に着目している。その1つが、長寿者の割合が多い「ブルーゾーン」に数えられる沖縄のヘルスケアの価値。2021年度はブルーゾーンをテーマに「国内富裕層向けプロモーション事業」(沖縄県)、「地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進に向けた実証事業」(観光庁)、「新たな沖縄観光サービス創出事業」(内閣府)といった推進事業が相次いで採択されたと話すのは、2020年10月の本連載記事「単なる観光資源からの脱却、日本ブランド『ウェルネス』の可能性」でお話を伺った、琉球大学国際地域創造学部/観光科学研究科の荒川雅志教授だ。

長寿を支えるのは人のつながり

 世界のブルーゾーンとみなされているのは、沖縄、サルデーニャ島(イタリア)、イカリア島(ギリシャ)、ロマリンダ(米カリフォルニア州)、ニコヤ半島(コスタリカ)の5つの地域で、そこで暮らす長寿者たちには9つの要素が共通、もしくは類似するという。

1 適度な運動を続ける
2 腹八分で摂取カロリーを抑える
3 植物性食品を食べる
4 適度に赤ワインを飲む
5 はっきりした目的意識を持つ
6 人生をスローダウンする
7 信仰心を持つ
8 家族を最優先にする
9 人とつながる

 荒川教授は「運動や食生活と健康との関わりについては、これまでも広く語られてきていますが、コロナ禍の現在、ブルーゾーンで注目すべきは人とのつながり、ソーシャルネットワークだと私は考えています」と話す。荒川教授が長寿に関係した沖縄の精神性の基盤として挙げるのは、独自の相互扶助「ゆいまーる」。「ゆい」(結い=相互扶助、協働)、「まーる」(廻る=順番)という意味を持ち、那覇都市モノレール「ゆいレール」の名称の由来にもなったほど、沖縄の人にとっては馴染みの深い言葉だ。

 「農協働制度としての『ゆいまーる』は消滅しつつあるものの、生活の諸側面、とりわけ精神的支柱としては沖縄全域に色濃く残っています。家族、友人知人はもちろん、たとえ血縁地縁がなくても地域の支え合いはあり、若い世代においても見られる。その継承が精神に安定をもたらして生きる気力となり、結果的に長寿の秘訣になっていると考えられます」

琉球大学国際地域創造学部/観光科学研究科の荒川雅志教授。「27歳のときに次なる生き方を模索する旅の途中で沖縄を訪れ、フェリーで上陸したその日からアレルギー性鼻炎が消えました。そのまま移住して今日に至る、私自身がブルーゾーンで人生が変わったひとりです」(写真:松隈 直樹、以下注記のないものは同)
琉球大学国際地域創造学部/観光科学研究科の荒川雅志教授。「27歳のときに次なる生き方を模索する旅の途中で沖縄を訪れ、フェリーで上陸したその日からアレルギー性鼻炎が消えました。そのまま移住して今日に至る、私自身がブルーゾーンで人生が変わったひとりです」(写真:松隈 直樹、以下注記のないものは同)
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