緊急事態宣言が解除されて以降、行動の制限は多少なりとも緩和されたが、日々発表される数字を見ればまだまだ心穏やかではいられない。予断は許されず、第2波、第3波への備えを含めてコロナ禍の影響は続きそうだ。人の移動こそ少しずつ増えてはいるものの、ビジネスを含めて旅を躊躇する人は少なくない。

 不安がぬぐえない世の中において、ヘルスツーリズムは今、どういう状況なのか。コロナ禍を受けての課題はなにか。NPO法人日本ヘルスツーリズム振興機構・業務執行担当理事の髙橋伸佳さんにお話を伺った。

髙橋伸佳(たかはしのぶよし) :順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科修了。2006年にNPO法人日本ヘルスツーリズム振興機構を設立。日本経団連ヘルスケア産業部会委員、経済産業省「医療技術・サービス拠点化促進事業」研究委員他、旅や健康にまつわる公職を歴任。教育機関や地域振興にも携わっている。JTB総合研究所ヘルスツーリズム研究所長。著書に「交流がつくる健康なまち」(JTBパブリッシング)など (写真提供:髙橋伸佳氏)

コロナ禍が変えた旅のニーズ

 「ヘルスツーリズム以前に、コロナ禍によって旅に対する根本的な価値観が変わった感がありますね」と、20年近くにわたり健康という観点から観光事業や地域振興などに携わってきた髙橋さんは切りだす。自らも所属するJTB総合研究所が2~5月に実施した「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化および旅行拡大に向けての意識調査(2020)」ほか、各種調査結果がその変化を物語っているという。

 「おいしいものを食べたいというような、従来型の物見遊山的な旅への欲求は、ここ数カ月で急激に落ち込みました。逆に旅行を選択するベースとして増えているのは、安全、安心、健康増進や休養へのニーズ。今の状況が永遠に続くわけではありませんが、旅に関する考え方は世代に関わらず大きく変わってきているのが現状です」

 ソーシャルディスタンス。密を避ける新しい生活様式が広がる一方、自粛やリモートワークを経たことで、「対面や直接のコミュニケーションが大切だ」という、人とのふれあいをあらためて求める声も高まっている。

 「会話や会議はオンラインで成立しても、やはり直接会った方がいい。そういう気持ちは、僕自身にもあります。仲間と密になりたくて旅に出る人もいるのですから、どのようなふれあいをもてなしとして展開できるかは、今後の観光業界の課題のひとつでしょう」

 刻一刻と状況が変動して先が見通せないなか、各種ヘルスツーリズムもまた、催行は難しいのが現実。動きが止まっているのではないかとの質問を投げかけたところ、髙橋さんは笑顔を見せた。

 「ダウンサイジングしていくかと思いきや、先ほどお話しした意識調査の結果を反映するかのように、こんな大変な時期にも関わらずヘルスツーリズムの認証申請は途絶えず、事業者は増えているんです」