メンタル、フィジカルの両方を結びつけた「逃げ旅」

 ヘルスツーリズム全体の価値をあげ、産業として成長していくためには、よりきめ細やかな対応が必須だとも髙橋さんは話す。

 「たとえば海外でのヘルスツーリズムは、細かいコンサルテーションを受けるのが基本ですが、日本ではまだかんたんな確認程度で終わる場合が多い。また、ほとんどのツアーにはウォーキングやストレッチが含まれていますが、それすら体の負担になる人がいる。痩せなくてもいい人に、低カロリーの精進料理を出す必要はない。コンサルテーションに基づき、年齢や体調、体力はもちろん、アレルゲンや基礎疾患を含め、それぞれに見合った配慮、オーダメイド的なヘルスケアを施していくというのが、今後の大きな課題でしょう」

 さらには、よりターゲットを絞り込むためのマーケティングも大きな課題だとも。

 「なんとなく健康的、体に良さそうという漠然とした展開ではなく、リピート率を上げるためには、きちんとしたマーケティングによるニーズに応じたターゲット設定も必要です。メンタル、フィジカルの両方を結びつけた、新たな展開も考えられる。そういう意味では、断食や美容など、女性向けの領域はいい流れができていると思います」

 メンタル、フィジカルの両方を結びつけた、新機軸……。そういう意味において、これまで数々のプログラムに参加してきた髙橋さんがもっとも印象に残っているのは、琉球大学ウエルネス研究分野の荒川雅志教授が提唱する「ウエルネス・サードプレイスの旅」の展開例「逃げ旅」(主催:イーストホームタウン沖縄代表取締役社長・相澤和人)だという。

「逃げ旅」のプログラムから、美しい海を行くホースセラピーと、波音を聞きながらの坐禅。写真を眺めているだけでも癒やされることを思えば、実際に逃げてみたくなる(写真提供:イーストホームタウン沖縄)

 「沖縄の自然や聖地にふれ、地域の人と交流するプログラム『逃げ旅』のメインターゲットは、ストレスを抱えて生きる女性。産業カウンセラーとともに物語性をもったそのプログラムを体験しながら、自分と向き合っていける。2泊3日のツアーの最中、思わず泣いてしまったこともありました。スピリチュアルな点では抜きんでた存在ですね」

 コロナ禍のなか、日本人の生真面目な気質が注目されたことを思えば、「逃げる」という言葉ひとつとってもやさしさを感じる。この数ヶ月間の辛抱により、我々は多かれ少なかれ精神的なダメージを受けているはず。ウィズコロナの状況においては、ヘルスツーリズムにおいてもメンタル面での癒やしがより大切になってくるだろう。

※ サードプレイス:快適でゆったりと脱力でき、癒される場所でありながらほどよい刺激があり、自己開発できる場所。