目指すのは地元の人の行動変容

 ところで、なぜヘルスツーリズムへの転換を図ったのか。

 「もともと下北半島を訪れる観光客は熟年夫婦が多いのですが、2名だけでツアーを催行してもビジネスとしては成立しにくい。対してヘルスツーリズムは、会社の研修旅行やワーケションといった観光とはまた異なるチャネル、可能性が生まれるし、人数がまとまりやすいのが魅力です」

 実際、県内の優良企業が複数視察に訪れ、前向きな評価をもらっていたが、その矢先にコロナ禍で出鼻をくじかれる。

 「ヘルスツーリズムの手応えはありましたから、コロナ禍が終息したらという期待はあります。いや、コロナ禍を経たこれからこそなおさら、自然や健康をメインにしたフィールドに風が吹くのではないでしょうか」

 とはいえ奥薬研温泉、下風呂温泉までは、青森空港から車で約2時間30分。県内の移動だけを考えても、アクセスは良くない。

 「首都圏に住む人にとって、下北半島は外国と同じくらい遠い感覚でしょうね。距離はマイナスポイントかもしれませんが、その分、転地効果が大きいかも……」と島氏は冗談めかして語ったが、筆者は実際、その遠さが日常との乖離を生んでいる環境をとても楽しんでいた。

 「私たちが現在、想定しているのは、大企業や県外からのお客様ではなく県内の企業ですし、100人のツアーが来なくてもいい。正直なところそれほどの人が来てしまったら、対応に困る。求めているのは、それなりのほどよい活性化なんです。加えて、ツアーを重ねることで地元の人に健康への行動変容が生まれる両立も目指しています。青森県は長年にわたり、短命県のトップを維持。青森の人たちはどこに行くのにも車を使いがちで、歩きません。ですから例えば朝の散歩に地元の人が参加し、一緒に歩く未来が理想ですね」

マグ女の坂本氏(左)、島氏に挟まれた筆者。マグ女の活躍は、八戸のサバ女、関門海峡のフグ女など新たな組織を生み、連携が広がっている。「これまでのまちづくりは、面白い、楽しいという感覚的なことを進めてきましたが、ヘルスツーリズムではエビデンスを意識するようになった。理論づけて考えるから、失敗しても検証して改良していける」と島氏
マグ女の坂本氏(左)、島氏に挟まれた筆者。マグ女の活躍は、八戸のサバ女、関門海峡のフグ女など新たな組織を生み、連携が広がっている。「これまでのまちづくりは、面白い、楽しいという感覚的なことを進めてきましたが、ヘルスツーリズムではエビデンスを意識するようになった。理論づけて考えるから、失敗しても検証して改良していける」と島氏
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