ゴミ拾いもまたヘルスツーリズムになり得る

 現在、ヘルスツーリズム関連では、新たなツアーのプログラム検討中だと島氏は話す。それは、ゴミ拾い。朝のヨガを担当したインストラクター古畑夏希氏の言葉が、その発想のきっかけだったという。

 「心と体の健康は身の回りをきれいにすることと結びつく、という教えがヨガにはあると知りました。ゴミ拾いは既に我々がやっている活動ですが、ヨガの理論ではヘルスツーリズムとも結びつく。SDGsなら、場所に負荷をかけない持続可能な観光。物語があれば、色々なことがつながり広がっていくのが面白いですね」

 とはいえ、課題は少なくない。奥薬研温泉で宿泊しないのは、旅館がほとんど廃業し、立ち寄り湯と土産や軽食を扱うレストハウスしかない現状ゆえ。ツアー客を案内しても、地域の経済をまわすことはできない。下風呂温泉郷がある風間浦(かざまうら)村もまた、高齢化や過疎化が進む。それに対して島氏や「マグ女」の活動は劇的な効果をもたらすものではないが、彼女たちはそれでもなお歩みを重ねる。

 その背景には、大間町在住の島氏がこれまで手掛けた地域興しの数々が実ってきた経験がある。とりわけマグロ解体ショーを含むマグロでの町興しはコロナ禍前、広く全国から観光客が訪れ、予想以上の賑わいを見せていたそうだが、最初は寂しい結果に終わり、やめようという意見もあったという。

 「めげそうになった時、これまでは何もやらずに結果がゼロだったけど、ひとり来ただけでもプラスなのだから続けようという、仲間の声が励みになりました。歳月をかけて積み重ねた結果、沸点がきた。今の活動もいつかは沸点がくる、時間はかかってもいいと思っています」

 島氏が暮らす大間町は、これからがマグロ漁の本格的な季節。希少な心臓など、地元ならではの幸も待ち受ける。また、下風呂温泉郷では12月~3月にかけてアンコウが主役になり、全国でも珍しい刺身や生の肝が食べられる。訪れていただければ、下北半島といういわば僻地に魅力的な観光資源が潜むことに気づいていただけるだろう。下北半島に限らず、コロナ禍を立ち止まり考える時間と多くの人がとらえ、各地で取り組みの再構築がなされている今、終息後の旅が待ち遠しくてならない。

(タイトル部のImage:松隈 直樹)